▽欧州:英米の心離れ
英米とその他の欧州諸国との間では3月、軍事分野での意見の食い違いがあらわになった。米国は、ドイツなどの北大西洋条約機構(NATO)の加盟国が軍事費を増額するかを、今後の鉄鋼・アルミニウムの輸入関税の交渉の材料とする考えを示した。英国は、欧州連合(EU)の即応部隊「欧州連合戦闘群」を率いる任務を担うことはできないと表明した。
米国がドイツなどのNATO加盟国が軍事費を増額するかを鉄鋼・アルミニウムの輸入関税の交渉の材料にするとしていることについて、多くの国の高官は、米国が多くの無関係な議題を結びつけていることは、大西洋両岸の関係を大きく損なっていると反発している。欧州委員会のギュンター・エッティンガー委員(財政担当)は「(米国の鉄鋼・アルミニウム輸入関税は)貿易の問題であり、防衛やNATO、その他の議題と混ぜるべきではない」とコメントした。
米国はこれまでに、軍事支出を国内総生産(GDP)の2%とする目標を実現するようNATO加盟国に迫っている。これを達成した国はまだ少ない。EUは現在、米国と鉄鋼・アルミニウム関税の免除を求める交渉しており、米国が軍事支出の問題を再び持ち出した意図はEUに圧力をかけることにある。
英国防省は3月、EU離脱にともない、英国は、EUの即応部隊「欧州連合戦闘群」を率いる任務を担うことはできないとの立場を表明した。多くのメディアはこれを、英国がEU離脱後、EUの防衛事務と距離を置く最初のシグナルとみなしている。
「欧州連合戦闘群」は、いずれも大隊級の18部隊からなる。戦闘群は欧州理事会の指揮を受け、EUの「常備軍」と言える。EU加盟国が持ち回りでリーダー役を務める。既定の計画によると、英国には2019年下半期にその役が回ってくるが、英国の欧州離脱の重要な移行期に重なる。