地域一体化、政策調整、外交・戦略連携、経済・貿易関係、地域・世界の影響といった各次元から見ると、現在の世界においてはEUと北米が秀でていることは間違いない。1950年代から一体化の動きを始めたEU、1990年代より自由貿易区の模索を開始した北米は、価値観と帰属感に基づく高度に一体化された地域統合の経験、成熟した協力制度、相互依存する自由貿易メカニズムを示した。その外交・戦略のすり合わせの努力、地域計画の共存共栄設計、紛争解決メカニズムのリスク管理、文化の包容や統合の理念などは、アジアが一致団結し台頭するための新鮮な参考材料になる。(筆者・笪志剛 黒竜江省社会科学院北東アジア研究所長、研究員)
EUと北米の一体化が3.0版と2.0版に向かっているとするならば、アジアの未だに未熟な一体化は1.0版である。ただしアジアは世界一体化の舞台の中央に立っており、自由貿易及び地域協力の主役を演じている。アジアの特色ある一体化は高い潜在力を秘めており、人類社会の発展に対して想像を上回る啓示を与える。力強いアジア経済は経済・貿易統合を促し、さらに地域の理念の調整を促さなければならない。さらに戦略の理解、外交の調整、構造の再構築を促し、アジアの帰属感を強め共通の価値観を形成する必要がある。アジアの高度に一体化された協力メカニズムを構築し、EUや北米に匹敵するアジア共同体を形成するのだ。
経済・貿易一体化の現実的な基礎と潜在力を見ると、アジア一体化の建設は決して砂上の楼閣ではなく、長所と有利な条件を持っている。まず、アジアは21世紀の世界経済の重心になっている。貿易は世界の3分の1、GDPは40%、外貨準備高は70%を占めており、世界経済への寄与度は60%に達している。「アジアの世紀」は決して根拠がないわけではなく、これから証明されることになるだろう。次に、地域内の中日韓印露などの世界経済における地位が高まり続けている。中国の世界経済への寄与度だけでも30%以上に達している。アジアには、国の台頭が地域の台頭をけん引するという基礎が備わっている。それから、中国・ASEAN自由貿易協定(FTA)、中日韓FTA、RCEP、CPTPPなど一連の通商協力メカニズムは、地域や世界に対する影響力を拡大し続けている。「一帯一路」、アジア太平洋自由貿易圏、アジア運命共同体などの理念・イニシアチブが支持を集めている。ロシアの「東方シフト」、欧米のアジア太平洋シフトは、上述した影響の大きさを反映している。