麗澤大学特任教授 三潴 正道
「うん、そこで大海亀の足を切って柱にしたんだ」
「可哀想!」
「と、まあ、あとは『史記』を読んで」
「わかったわ。でもなんで東に傾いたかって理由はまだ聞いてないわ」
「言い伝えではね、水準器がまだなかったからそうなっちゃったんだって」
「本当?嘘っぽい!」
「いや、それまではね、空のお星さまも静止していたんだけど---」
「おかげでぐるぐる動き出した、って言いたいの?」
「うん、まあね」
「中国人が想像力豊だってことは認めるわ」
「ただね、ここで知っておきたい大事な話がある」
「何かためになる話?」
「うん、『紅楼夢』って知ってるだろ?」
「もちろんよ。『紅楼夢』を知らずして中国文学を語るなかれ、なーんてね」
「『紅楼夢』は『石頭記』って言うんだよ」
「えーっ、なんでいしあたまなの?」
「いしあたま?、アッそうか!ハハ、君は相変わらずユニークだね」
「からかわないで!何がおかしいの?」
「石頭ってさ、石ころのことだよ」
「やだ!そういえばそうよね、恥ずかしい!」
「実はね、女媧が天に空いた穴を繕ったとき、五色のレンガが一個余っちゃった」
「足りないよりいいじゃない」
「そういう問題じゃないんだ。余ったレンガは悔しかった」
「なんで?」
「私だけがお役に立てないなんて、と悔しくて泣き続けた」
「律儀な煉瓦さんね、楽できるのに」
「可哀想になった女媧はこの煉瓦を地上に送った」
「地上で何かいいことがあるの?」
「賈宝玉っていう絶世の美男子に生まれ変わらせた」
「まあ、すごい!」
「それから賈宝玉は日本の光源氏のように数多の美女とストーリーを展開する」
「美女がたくさん出てくるのね」
「金陵十二釵、中でも楚々とした林黛玉、豊満な薛宝釵---」
「あなたがウットリすることはないでしょ!」
「中国網日本語版(チャイナネット)」2018年7月30日