▽大きな災害後、「苦い経験を教訓に」
日本の官僚制は「世論の壁」との駆け引きもある。「産経新聞」は社説で、これまでの政府の対応は遅く、発表した情報も不十分、法的体制や医療検査体制にも不備があるとし、制度から改善する必要性を求めた。「日本経済新聞」も、世界最新の感染情報を集める体制の迅速な構築、政府の関連部署の横のつながりを主導する「司令塔」の設立、感染拡大情況がわかるホームページの開設を政府に求めるとともに、首相にメディアとの意思疎通を提案した。
日本のメディアはその矛先を加藤厚生労働相に向けている。週刊ダイヤモンドは「一国の制度は法律、政令、法則などで構成されるが、最終的には政治家が決断するものだ。国の衛生の最高責任者である加藤厚生労働相は危機が到来しても毎日テレビカメラに笑顔を向け、何を決定するのも遅い。これは最も容認できないこと」と批判した。
夕刊フジによると、日本政府は1月30日、「新型コロナウイルス肺炎感染症対策本部」を設置したが、2月18日までに開かれた会議はたった11回。本部長である首相が毎回会議の始めに簡単な挨拶をし、会議全体はたった10分足らずだったという。東京新聞などが掲載した読者からの手紙にも「感染症への対応が遅い」といった声や「経済の悪化を招くのでは」といった懸念、「各党に人命優先の行動」を求める声が上がっている。「世論の壁」による監督は、日本社会全体の再認識、そして関連制度の改善を促す。
客観的にみると、大きな災害を経験するたびに日本の行政体制、特に官僚制は変化してきた。阪神大震災後、日本政府は事務的な情報の伝達体制を改革。さらに「災害対策基本法」を全面的に改正し、被災地への自衛隊派遣を「常態化」させた。東日本大震災後は行政制度改革に積極的に取り組み、政府と都道府県による救援物資の支援、分配、物価への関与権限を拡大し、政府が被災地の市町村に代わって被災者の避難に協力できるようになった。
加藤氏は「環球時報」の記者に、日本にいまの官僚制ができたのは歴史的要因があると説明。加藤氏によると、戦時中、日本の行政体制は何事も軍部に合わせ、自らの権限を大きくした。その結果日本は敗戦、民衆はこうした行政体制を敵視するようになった。戦後、日本の行政体制は「分権」「権限制限」「各々が各々の職責を果たす」ことに重点が置かれ、権力は大きいほどいいのではなく、細分化されたほうがいいとなった。つまり各部署はその部署以外の仕事をやりたがらない、官僚が法律や行政規定以外のことをやりたがらないという弊害を長年積み重ねることになった。一見責任感があるようだが、実際には重責を担う精神がない。現在、日本社会は行政体制改革の重要性に気づき、官僚主義の弊害をさらに克服しようとしている。日本の官僚制は大きな災害があるたびに大きな試練に直面し、幸いにも大きな試練のたびに進歩しているといえるのではないだろうか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年3月4日