岸田文雄氏の首相就任後、「経済安保」が日本新内閣の看板政策になった。岸田氏は所信表明演説の中で、「経済安全保障など新しい時代の課題に果敢に取り組む」と繰り返した。
「経済安保」とはその名の通り、日本が経済の課題を国家安全レベルに格上げすることを意味する。中国への「競争、警戒、けん制」が日本の経済安保政策を貫く伏線であることは言うまでもない。近年、日本国内の政治環境において、経済の「安全問題」とは中国を指すことが多い。日本国内ではいわゆる中国の「サプライチェーンリスク」「知的財産権の盗用」、日本企業の中国への情報・データ漏えい、「日本のハイテク人材の発掘」などが盛んに喧伝されている。日本のノーベル賞候補者、「光触媒の父」とされる藤嶋昭氏が中国の大学に移籍したことが、日本国内で最近大きな反響を呼んだ。
日本の一部の政治家、学者、メディアにとって、日本経済の安全に対する中国の脅威は主に次の3つだ。
(1)中国が軍民融合政策やサイバーセキュリティ法などを通じ、日本からの先進技術とデータ・情報を軍事に転用するとし、これに基づき中国企業が生産する通信基地局、ドローン、監視カメラなどの設備に安全リスクが存在すると疑問視する。
(2)中国が政府の経済に対する強い支配力を利用し日本経済の脆弱な部分(レアアースなどの川上原材料の日本への輸出など)を制御し、日本のマクロ経済もしくは特定の業界及び企業を集中的に攻撃する。
(3)中国経済の台頭が日本の国際的な影響力を弱める。中国はハイテク分野で世界の先頭集団に飛躍し、日本などの西側諸国の技術独占を脅かしている。さらには「一帯一路」も日本の発展途上世界への影響を弱めるというのだ。一部の人物は公然と、中国は対外的な経済の影響力の強化後に自国の政治モデルを輸出し、「自由民主国」陣営を脅かし、日本が置かれる国際環境を悪化させると述べている。
岸田氏は、日本経済の根本的な問題が中国にないことを知っているはずだ。安倍政権は超量的緩和策を打ち出し、日本の株価を続騰させ、円安を維持した。これは経済の活力をある程度刺激したが、資産価格を上げ、社会の貧富の格差を拡大した。アベノミクスは2%という緩やかな物価上昇目標を達成できず、むしろ日本政府の借金を拡大し、財政健全化の目標達成から徐々に遠ざかった。深刻な消費高齢化に新型コロナウイルスの衝撃が重なり、日本経済は回復の力が乏しい。岸田氏が掲げた「新資本主義」という主張は、社会の分配と公平をより重視し、安倍路線を修正しようとしている。これには外部にスケープゴートを求めるのではなく、国内の構造改革に取り組む必要がある。
中日韓を軸とする東アジアは現在、北米とEUに比肩する世界3大経済中心地の一つになっている。世界2・3位の経済体である中日の経済規模は世界の23%を占めている。両国の経済は深く融合しており、産業チェーン・サプライチェーンの協力は世界経済及び産業構造に影響を及ぼす。中国の巨大な市場の需要も日増しに、日本経済にとって重要な外部の支えになっている。日本が安全の概念を大きく広げ経済政策を歪め、中日経済の「競争性」ばかりを強調すれば、日本経済の回復をより難航させるばかりだ。また地域の経済一体化の流れに影響を及ぼし、地域の安全環境をより複雑にする。
経済安全を守ることは本来、世界各国の正常な政策方針であるが、関連政策は適度を把握し、過ぎたるは及ばざるが如しを避けなければならない。日本の経済安保政策における中国関連の内容は、中国と米国の競争に対応する意味合いも大きい。米国の対中政策の調整、中国と米国の経済貿易対話・協議の再開に伴い、日本も大きな流れを認識し、開放・包摂・協力・ウィンウィンの時代の流れに順応するべきだ。「経済安保」を推進しながら自縄自縛し、自国の発展空間を狭めることを回避するべきだ。(筆者・項昊宇中国国際問題研究院アジア太平洋研究所客員研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年10月11日