2年続くコロナ禍は、各国にとって厳しい試練だ。思い切った防疫措置により、中国はこの2年間で毎年20%超の輸出増を実現した。貿易における「世界の工場」としての地位を高め、人民元レートが堅調に推移し、すべての主要貿易パートナーに対して元高となった。これは海外メディアに対して、中国の成長モデルの限界はどこにあるのかとの疑問を抱かせている。(筆者・許維鴻 甬興証券副総裁)
「Nikkei Asia」は4日、中国の成長モデルに関する疑問を呈した。この記事によると、中国は過去40年以上に渡る改革開放、外向きの経済により工業化・都市化をけん引した。国際貿易に占める中国の割合が上がり続け限界に近づくに伴い、元高による不動産バブルが不可避になる。昨年下半期に始まる不動産の債務問題は、中国の経済成長モデルが限界に達したことを意味する。中国経済はポストコロナ時代に「非常に長期的な低迷」に陥る可能性が高いというのだ。
日本メディアの中国経済への疑問視は、非理性的な政治の攻撃ではなく、典型的な日本の特色がある。円高による経済の長期停滞、外向きの経済成長の限界。これらは日本経済の過去30年に渡る経験であり、しかも現在も突破口が見つかっていない。「銅を以て鏡と為せば、以て衣冠を正すべし」と言われるが、ここからは日本経済を鏡とし、中国のポストコロナ時代の経済成長の新モデルを見ていこう。
まず、現在多くの海外メディアに過大評価されている、中国のいわゆる不動産会社の債務問題だが、これは日本の30年前とは完全に異なる。当時の日本の不動産バブルは、人類の経済の歴史における最大の資産バブルと言える。90年代には、世界トップ10の銀行のうち半数が日本の銀行だった。これは土地及び不動産の法外なほど高い価値によるもので、その代価として不動産バブルが崩壊し終わりなき景気低迷に陥った。日本の不動産バブル崩壊による実体経済の深い谷を目にしたからこそ、中国は中国共産党第18次全国代表大会より、不動産関連のレバレッジを厳しく規制し、市場の理性への回帰を促した。一部の不動産会社は国内の銀行から融資を受けられず、やむなく法の網をかいくぐり海外で資金調達した。昨年下半期より、これらの海外の債務が5年前後の返済のピークを迎えた。その一方で国内の不動産市場はさらに理性的になった。一部の不動産会社の盲目的な拡張は相手にされず、債務不履行に陥った。今年の中国の不動産業界の不良債権問題は、金融のシステマティックなリスクではない。中国の経済成長モデルはすでに都市化に対する絶対的な依存から脱却している。
次に、中国の共同富裕と農村振興の発展モデルも、日本の「所得倍増計画」とは異なる。国内の多くの学者はこれを日本の60年代の所得倍増計画と比較することを好む。これには一定の道理があるが、必ずしも同じではない。なぜなら所得倍増計画の成功を支えたのは都市化と工業化であるが、農村部の高齢化問題、農産物の高い関税による民生の問題については多くの批判を浴びたからだ。中国は土地が広く物資が豊かで、「三農」(農業・農村・農民)問題は各級政府が長期的に直面する民生の課題である。しかしこれはまた中国の投資のブルーオーシャン、中西部経済発展の奥行きでもある。そのためポストコロナ時代の中国の経済成長の新モデルはまず、農村振興と都市部・農村部共同発展を模索し、全国各地・各民族の共同富裕を実現する新モデルだ。国家農村振興局が昨年、正式に設立された。6月には「浙江省の共同富裕模範区の高品質発展・建設に関する中共中央と国務院の意見」が発表された。これらはこの新モデルのルートを模索し、青写真を描いた。
最後に、中国の資本市場がベンチャー企業を支持する新しい発展モデルは、日本から羨まれている。科学技術大国として成果をより効率的に転化するため、日本は前世紀末より自国版のナスダックを作ろうとしてきたが、残念ながら成功していない。これは国としての完全な主権がなく、経済に規模化の奥行きがないことが根本的な原因だ。中国は近年、欧米からハイテクの締め付けを受けている。多層的な資本市場を通じ地方政府の積極性を発揮することで、初めてベンチャー企業を効果的に次々と生み出すことができ、「中国製造」の強みを「中国創造」に転化できることを認識する識者が増えている。
中国資本市場の登録制改革、創業板及び科創板の建設が昨年、持続的に推進された。一般人の貯蓄の「引っ越し」は株式市場に尽きることなき資金を提供し、公募基金の規模とA株の株価が急成長した。同時に多くの地方政府の金融エコシステム発展の新モデルの模索にも多くの見所があった。例えば上場企業の数がすでに200社を超えている蘇州市は、昨年4月に蘇州市の「株投資の持続的な高品質発展」の促進に関する若干の措置の通知を出し、「蘇州市の産業資本センター建設の推進加速の行動計画(2020-22年)」の手配を細分化した。これは典型的な「科学技術+金融」の、中国の特色ある地域経済発展の新モデルだ。これはその他の地方にとっても参考になり、これによって多元的なポストコロナ時代の中国経済成長の新モデルを共に構築できる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年1月7日