四 社会主義市場経済体制の整備と経済発展パターンの転換を速める
経済建設を中心とすることは国家振興の要であり、発展は依然としてわが国のすべての問題を解決する上でのキーポイントである。経済の持続的で健全な発展を促してこそはじめて、国が富み栄え、人民が幸せで何も心配することなくすこやかに暮らし、社会が調和を保ち安定するための物質的基盤をしっかりとうち固めることができるのである。発展こそ絶対的道理であるという戦略的思想を必ず堅持し、決していささかも揺るがしてはならない。
現代の中国において、発展こそ絶対的道理であることを堅持する上での本質的な要請は科学的発展を堅持することである。科学的発展をメインテーマとし、経済発展パターンの転換を加速することを主軸とするのは、わが国の発展の全局にかかわる戦略的選択である。国内外の経済情勢の新しい変化に即応して経済発展の新たなパターンをいち早く形成し、発展を促進する上での立脚点を質や効率の向上にシフトさせるとともに、各種の市場主体が発展に励む新たな活力をさらに引き出し、革新により発展を促す新しい原動力を大いに強め、現代産業の発展に向けた新しい体系づくりに力を入れ、開放型経済の発展における新たな強みをいっそう育成し、長期的な発展の後続力を絶えず増強していかなければならない。
中国の特色ある新しいタイプの工業化、情報化、都市化、農業現代化の道を歩むことを堅持して、情報化と工業化の高度な融合、工業化と都市化の良好な相互作用、都市化と農業現代化の調和を強め、工業化、情報化、都市化、農業現代化の歩調をあわせた発展を促す。
そのために、次のような五つの方面の重要な任務を全うしなければならない。
(一)経済体制の改革を全面的に深化させる。改革を深化させることは経済発展パターンの転換を加速するためのカギである。経済体制改革の核心的問題は政府と市場の関係をうまく処理することであり、そのために市場の法則をさらに重んじ、政府の役割をよりよく発揮させなければならない。いささかも揺るぐことなく公有制経済を強化し、発展させ、公有制の実現形態の多様化を推し進め、国有資本がより多く国の安全保障や国民経済の命脈に関わる重要な業種とカギとなる分野に投下されるよう促し、国有経済の活力、支配力、影響力を絶えず増強させていかなければならない。また、いささかも揺るぐことなく非公有制経済の発展を奨励し、サポートし、誘導し、各種所有制の経済が法律に基づいて諸生産要素を平等に利用し、市場競争に公平に参入し、同じく法律の保護を受けるよう保証する。そして、現代的市場システムを健全化させ、財政・税制の改革を速め、金融体制の改革を深化させると同時に、金融に対する監督・管理を改善し、金融革新を推し進め、金融の安定化を保つ。
(二)イノベーションによる発展促進の戦略を実施する。科学技術のイノベーションは社会的生産力と総合国力を高める戦略的な支えであり、それを国の発展の全局の核心に位置づけなければならない。中国の特色ある自主イノベーションの道を歩むことを堅持し、グローバルな視点でイノベーションをはかり、それを推し進め、オリジナルな創造力、インテグレーションによるイノベーション及び導入・消化・吸収・再革新の能力を高め、相互的提携によるイノベーションをさらに重んじなければならない。科学技術体制の改革を深め、国家革新システムの整備を加速するとともに、企業を主体とし、市場を導きとする、産・学・研を結びつけたイノベーションシステムづくりに力を入れる。知識イノベーション・システムを完全なものにし、国の科学技術重要特定プロジェクトと知的財産権戦略を実施して、社会全体の英知と力を集中してイノベーション能力の向上に取り組む。
(三)経済構造の戦略的調整を推し進める。これは経済発展パターンの転換を加速する上での主要な攻略方向である。需要構造の改善や、産業構造の最適化、地域間のバランスのとれた発展、都市化の推進などを重点とし、経済の持続的で健全な発展を制約する構造にみられる重要な問題の解決に力を入れなければならない。内需拡大という戦略的な拠り所をしっかりととらえ、消費需要の拡大を目指す、長期的に効果をもつ仕組みをいち早く確立し、国内市場の規模を拡大しなければならない。実体経済の発展を確固たる基盤としてしっかりと把握し、その発展にさらに役立つ政策措置を実行して、戦略的な新興産業と先進的な製造業の健全な発展を推し進め、在来産業の業態転換と高度化を速め、サービス業、とりわけ現代サービス業の発展と拡大を促す。引き続き地域発展の総体的戦略を実施して、各地域の比較優位を十分に生かし、かつての革命根拠地、民族地区、辺境地区および貧困地区への支援を強化する。
(四)都市・農村の発展の一体化を推し進める。農業・農村・農民の問題を上手に解決することは全党の活動の最重要課題である一方、都市・農村の発展を一体化させることは「三農」問題を解決するための根本的な道筋である。都市・農村のバランスのとれた発展にさらに取り組み、都市・農村の共同の繁栄を促さなければならない。「強農、恵農、富農」(農業を強化し、農民に実益をもたらし、農民を豊かにする)政策をいっそう実施し、広範な農民が平等に現代化のプロセスに参入し、現代化の成果を共有するようにする。現代農業の発展を加速し、農業の総合生産能力を高めて、国の食糧安全と重要農産物の効果的供給を確保する。新農村の建設と貧困脱却扶助開発をつっこんで推し進め、農村の生産・生活の条件を全面的に改善する。農村の基本的な経営制度を堅持し、それを完全なものにし、集約化、専門化、組織化、社会化が結びついた新しいパターンの農業経営体系を構築する。都市・農村の発展の一体化を目指す体制や仕組みをいち早く整備し、工業の発展によって農業の発展を促し、都市の発展によって農村の発展を牽引し、工業・農業の互恵と都市・農村の一体化が実現する新しいタイプの工業と農業、都市と農村の関係を形成する。
(五)開放型経済のレベルを全面的に向上させる。経済グローバル化の新しい状況に即応するためには、より進んだ開放戦略を実行し、互恵・ウィンウィン、多元的均衡を保ち、安全と高効率を目指す開放型経済システムを整備しなければならない。対外経済の発展パターンの転換を速め、構造の最適化、深度の増大化、効率の高度化に向けて開放を推し進めなければならない。開放パターンを刷新し、輸出と輸入をともに重んじることを堅持し、外資利用の総合的優位と全般的な効率を向上させ、海外に出て行く歩調を速めるとともに、二国間、多国間、地域的またはサブ地域的な範囲における開放・提携を総合的に協調させ、世界的な経済リスクを防ぎ止める能力を高める。
われわれはぜひとも自信をうち固め、経済体制改革の全面的な深化と経済発展パターンの早期転換の大きなハードルを乗り越え、わが国の経済発展の活力と競争力をさらなる水準に引き上げなければならない。