――物価総水準の基本的な安定を保つ。消費者物価の上昇率を三%程度に抑える。目下、わが国の総供給は総需要を上回っており、圧倒的多数の製品の供給は充足し、とくに農業は数年連続で豊作を収め、食糧の在庫は十分にあり、これは物価の基本的な安定維持に寄与している。但し、今年度の物価を押し上げる諸要因の存在をおろそかにしてはならない。それは主として、国際市場における大口商品の価格上昇の伝達効果、国内のマネー・サプライと貸出のラグ的波及効果、資源にかかわる租税と資源関連製品の価格改革による影響、前年度消費者物価の変動によるラグ的波及効果などが挙げられ、これがある程度価格上昇の圧力を強めている。上記の目標は、インフレ期待の管理に役立つばかりでなく、改革の推進にも一定の余地を残すことができる。
――国際収支状況を改善する。対外貿易輸出入総額の伸び率を八%前後とし、貿易黒字額をいくらか縮小させ、サービス貿易の発展を速める。外資利用の質を高め、その構造を最適化させる。対外投資を着実に拡大し、その効率を高める。内需拡大に力を入れると同時に外需の確保と開拓に努めることは、国内外の二つの市場と二つの資源をよりよく活用することに役立ち、雇用の増加や、国際競争のなかで構造の最適化を促して発展の質的向上を図ることにも役立つ。国際経済は今なお複雑で厳しい環境に置かれており、保護貿易主義が一段と頭をもたげているが、重大な不測の事態が起こらない限り、今年の世界経済と貿易情勢は昨年よりよくなるであろう。それに加え、二〇〇九年度のわが国の輸出入はかなり落ち込んで、ベース数値が低くなっているが、われわれが国際分業の調整という有利なタイミングをとらえて、比較優位を発揮し、対外経済の発展パターンの転換を速め、品質で勝負することと集約化、多元化の道を堅持して、わが国経済の国際競争力とリスク抵抗力を絶えず高めていくことができれば、対外貿易の回復的な伸びを実現することが可能である。
上記の配置に従って取り組んでいけば、第十一次五ヵ年計画『要綱』に定められている諸目標に照らして、経済成長や都市部の新規就業者数、都市・農村住民の収入、新しいタイプの農村合作医療のカバー率、都市部基本養老保険の適用対象者数、主要汚染物質の排出総量、都市化率など大部分の指標は今年末までに達成または超過達成される見通しであるが、単位GDP当たりのエネルギー消費量や、研究と試験発展経費支出のGDPに占める割合などの目標達成は、なお多大な努力を払う必要がある。