二、二〇一〇年度経済・社会発展の全般的要請と主要目標
今年は第十一次五ヵ年計画期の最後の年である。経済・社会発展の諸活動を立派にやり遂げることは、世界金融危機の対処において全面的な勝利を勝ち取り、経済の安定的かつ急速な発展を保ち、発展パターンの転換を速め、第十二次五ヵ年計画の実施に向けて良好な基礎をうち固める上で非常に重要な意義をもっている。二〇一〇年度経済・社会発展の活動を進めるにあたって、党の第十七回全国代表大会と十七期三中総、四中総の精神を全面的に貫徹し、鄧小平理論と「三つの代表」の重要な思想を指針とし、科学的発展観を深くほりさげて貫徹実行し、マクロ的経済政策の継続性と安定性を保ち、引き続き積極的な財政政策と適度な通貨緩和政策を実施し、新しい情勢と新しい状況に基づいて政策の対応性と柔軟性の向上に力を入れなければならない。とりわけ経済成長の質と効率の向上や経済発展パターンの転換と経済構造の調整の推進をいっそう重視し、改革開放と自主イノベーションを推し進めて経済成長の活力と原動力の増強にいっそう取り組み、さらに民生の改善や社会の調和・安定の確保及び国内と国際の二つの大局の協調にいっそう力を傾注し、経済の安定的かつ急速な発展を実現するよう努めなければならない。
上述の全般的な要請に基づき、経済の安定的かつ急速な発展や経済構造の調整を図ることとインフレ期待に対する管理との間の関係を適切に処理する必要性、および第十一次五ヵ年計画『要綱』との整合性を考えて、今年度の経済・社会発展の主要な所期目標を次のように定める。
――経済の安定した成長を保つ。GDP成長率を八%前後とする。この目標の設定にあたっては主に次のようなことを考慮に入れた。雇用を拡大し、住民の収入を増やし、民生を改善し、社会の安定を維持しなければならないという諸要請から見れば、わが国の経済が一定の成長率を維持することは必要であり、所期目標をあまり低く設定すべきではない。しかし、目標をあまり高く設定しすぎると、その達成は難しくなるばかりでなく、経済運営を支える諸要素は過度の逼迫状態に陥り、資源・環境にも過度の負荷を与えることになる。今年の発展条件から分析すれば、消費需要は安定した伸びを維持する見通しで、投資の伸び幅はいくらか縮小するものの、一定の規模にとどまると見られ、輸出入も昨年度よりよくなる見通しであることから、経済成長目標達成の条件は整っているといえる。八%前後の目標値は昨年度の実質成長率よりもやや低く設定されているが、それは、経済活動の力点をやみくもにより速いスピードを追求することに置くのではなく、経済発展のパターン転換や経済構造の調整、また経済発展の質・効率と持続可能性の向上にいっそう力を注ぐことに置き、良好かつ急速な発展を実現させるということが念頭に置かれているためである。八%前後の成長率は国全体の目標で、所期的、指導的なものであるため、各地方は自らの実状と結び付けて、科学的に成長目標を設定すべきで、決して速いスピードをやみくもに追求してはならず、ましてや次々と数値を上乗せしてはならない。
――経済構造を最適化する。農業発展の基盤を一段と強化し、戦略的新興産業とサービス業の発展を速め、第一、第二、第三次産業の付加価値のGDPに占める割合をそれぞれ一〇・一%、四六・六%と四三・三%とする。研究と試験発展(R&D)経費支出のGDPに占める割合を一・七五%以上に引き上げる。盲目的な重複建設の抑制や、吸収合併・再編の推進、立ち遅れた生産能力の淘汰において積極的な成果をあげる。単位GDP当たりのエネルギー消費量については第十一次五ヵ年計画の目標の達成に努め、主要汚染物質の排出総量を引き続き減らす。都市化率を四七%とし、地域間発展のいっそうの協調を図る。発展パターンの転換を速めなければならないが、これは科学的発展観を徹底させ、経済の安定的かつ急速な発展を確保し、社会の調和・安定を促進する上での内的要請である。こうした複合目標を提起する目的は、各方面が景気の持ち直しの上向き傾向を定着させながら、政府による規制と市場調節の「二つの手」の役割を十分に発揮するよう誘導し、経済構造の最適化に力を入れ、戦略的新興産業の育成を加速し、立ち遅れた生産能力を法に則って淘汰し、企業の業態転換・高度化を促進し、省エネ・排出削減と環境保護を強化し、それと同時に、都市と農村および地域間の調和のとれた発展を大きく推進し、都市化のテンポを速め、経済の新たな成長分野と成長の極を形成し、内需、わけても消費需要のいっそうの増大を図ることにある。こうしてこそはじめて、広範な人民大衆の新たな期待と要望に応えることができ、経済発展を制約する資源と環境のボトルネックを打ち破ることができ、また発展の質と効率をいっそう高め、複雑で激しい国際競争の中で優位に立ち、主導権を獲得することができるのである。
――民生を保障し、改善する。都市部の新規就業者数を九〇〇万人以上とし、都市部の登録失業率を四・六%以下に抑える。都市・農村住民の収入を着実に増加させ、そのうち、農民一人当たりの純収入の実質伸び率を六%以上とする。諸般の社会保障制度をさらに充実させ、保障タイプ安住プロジェクトの建設とバラック地区の改造を早急に推し進める。人口の自然増加率を七‰以下に抑える。当面と今後の一時期における雇用情勢は依然として厳しいが、景気が持ち直し、上向きになる傾向がさらに固まり、積極的な雇用政策がいっそう徹底し、就業向けのサービスや養成訓練が絶えず強化されることによって、新規雇用は増加し続けるであろう。国内外の経済環境の変化のあおりを受けて、一部の企業は今なお経営不振から立ち直っておらず、農民工の就業確保にも影響が及び、さらに農産物の価格と生産効率が全般的に低い水準にあることから、農民の現金収入は伸び悩んでいる。しかし、国民所得の分配構造を逐次調整し、住民の収入増につながる政策をさらに充実させ、都市と農村の調和のとれた発展への取り組みをいっそう強化し、農村労働力の就業ルートや農村内部の収入増につながる事業を絶えず開拓していくことにより、農村住民の収入の継続的かつ安定的な増加を図ることは依然として可能である。