三、二〇一〇年度の経済・社会発展の主な任務と措置
国内外の発展環境と条件を総合的に見れば、今年の改革・発展・安定の任務はかなり重いことがわかる。経済・社会発展の主要目標を達成するには、次のことに取り組まなければならない。つまり、経済の安定的かつ急速な発展を保つことと経済構造の調整を結び付けて、発展の持続可能性を確実に高めること。内需とくに消費需要の拡大と外需の確保を結びつけて、経済発展の均衡性を強めていくこと。都市と農村および地域間の調和のとれた発展と都市化の推進を結びつけて、発展の空間を大いに広げること。自主イノベーションの推進と戦略的新興産業の育成を結びつけて、革新志向の発展を実現するよう努めること。改革の深化と発展の促進を結びつけて、経済発展の内生的原動力を全面的に向上させること。経済の発展と民生の改善を結びつけて、経済・社会発展の協調性を一段と高めることである。
(一)マクロコントロールの水準をさらに高め、経済の安定的かつ急速な発展の実現に努める。マクロ的経済政策の継続性と安定性を維持し、政策実施の度合いや段取り、重点をうまく把握する。(1)引き続き積極的な財政政策を実施する。適度な財政赤字と起債規模を維持し、今年度の全国財政赤字規模を一兆五〇〇億元にすることを提案する。この赤字率は昨年度とほぼ同じで、三%以下に抑える。そのうち、中央財政赤字は八五〇〇億元、地方債の代理発行額は二〇〇〇億元とし、この部分を地方財政予算に組み入れることとする。引き続き構造的な減税政策を実施する。財政の支出構造のいっそうの適正化を図り、重点を際立たせ、保護もすれば抑制もするという要請にしたがい、重点分野と脆弱な部分への支援を強化し、また勤倹を旨としてすべての事業を行うという原則を堅持し、引き続き一般的支出を厳しく抑制し、行政コストの削減に努める。(2)引き続き適度な通貨緩和政策を実施する。マネー・サプライと貸出総量を合理的に増やし、多様な通貨政策手段を総合的に運用して流動性管理を強化し、銀行系統の流動性に合理的なゆとりを持たせる。今年度、広義のマネー・サプライ(M2)の伸び率は約一七%、人民元建て貸出の新規増加分は約七兆五〇〇〇億元とする。信用構造の最適化に力を入れ、経済・社会発展における脆弱な部分や就業、戦略的新興産業、産業移転など諸方面への金融支援を強化し、農業や小企業の資金繰り難の問題を効果的に緩和させ、重点建設プロジェクトの融資を保証し、「両高」(高エネルギー消費・高排出)業種と生産能力過剰業種への融資を厳しく抑制する。引き続き直接金融を拡大させ、重層化した資本市場体系を整備し、企業債の発行による資金調達の規模を大きくし、融資構造を最適化させる。(3)財政・金融リスクを防ぎ止める。地方政府の債務に対する管理を強化し、地方政府の「融資プラットフォーム」づくりや政府保証の行為を規範化する。貸付条件を厳格に実行し、プルーデンシャルな監視・規制を強化し、金融のシステミックリスクを防ぎ止める。融資供与を適切に行い、四半期ごと、月ごとに異常な変動がみられないようにする。人民元為替レートの形成メカニズムをさらに充実させ、合理的な均衡水準における人民元為替レートの基本的な安定を維持する。
消費需要をいっそう拡大する。社会消費財小売総額は一五%増となる。(1)国民所得の分配構造の調整を速める。国民所得の分配構造の調整に関する計画や、政策措置の制定を急ぐ。引き続き多くのルートを通じて農民の収入増をはかり、企業定年退職者の基本養老年金額と一部の優遇対象の待遇水準を引き上げ、義務教育の学校および公共衛生や末端医療衛生の事業部門に向けた業績給政策を徹底させる。最低賃金基準を逐次引き上げる。(2)消費拡大につながる諸政策措置を完全なものにする。農村における家電製品・自動車・オートバイ購入の補助制度をいっそう強化し、家電製品の買い替え支援政策と農村における自動車購入の補助政策の実施期限を年末まで延期し、家電製品買い替え支援政策のテスト地域を拡大する。(3)合理的な住宅消費を促進する。中小型または中低価格の一般商品化住宅と公共賃貸住宅向けの用地供給を増やし、住民の自己居住または居住条件改善のための住宅購入をバックアップし、賃貸住宅の利用を提唱し、引き続き住宅ローンの条件や課税に関する差別化政策を実施し、投機目的の住宅購入を規制し、人民大衆の居住における基本的な需要を満たす。引き続き不動産市場の秩序を整頓し、規範化し、着工しないまま土地を囲ったり、また物件の売り惜しみ、販売の据え置き、価格のつり上げをするなどの法規違反行為の取り締まりにさらに力を入れ、一部の都市にみられる住宅価格の急騰を食い止める。(4)サービス消費を発展させる。文化創造や、映画・テレビ製作、出版・発行、エンターテインメント、展示イベント、アニメなどの文化産業を大いに発展させ、ブロードバンドネットワークの整備を速め、異種ネットワークの連携業務の発展をサポートし、文化、観光、フィットネス、教育・養成訓練、高齢者介護などのサービス消費を積極的に促進する。(5)消費環境を最適化する。消費者信用を拡大し、商品流通システムなどのインフラ整備を強化し、「万村千郷」①市場プロジェクトをさらに推し進める。市場の価格秩序の整頓と規範化に取り組み、製品とりわけ食品・医薬品の品質安全に関わる監督と管理をいっそう強化する。
合理的な投資規模を維持し、投資構造を最適化する。全社会の固定資産投資は二〇%増とする。そのうち、建設と改造投資は二一%増、不動産開発投資は一八%増とする。(1)政府投資プロジェクトの建設を着実に進める。引き続き四兆元の投資計画を実施し、二年間で中央政府投資を一兆一八〇〇億元追加する要請に則って二〇一〇年度は五七二二億元を追加計上し、通年で中央政府投資を九九二七億元計上し、そのうち中央の基本建設投資は三九二六億元とする。資金の使い道については、引き続き「三農」、保障タイプ安住プロジェクト、医療衛生・教育などの民生分野へ傾斜させ、中・西部地区、旧革命根拠地、民族居住地区、辺境地区、貧困地区へ傾斜させ、引き続き省エネや環境保護、自主イノベーションおよび技術改良を後押しする。資金を主に建設中または仕上げの工事に使い、新規着工プロジェクトを厳しく抑制し、「中途半端でストップするプロジェクト」がないようにする。(2)民間投資の増大に取り組む。民間投資の健全な発展を奨励、誘導する政策措置の策定と実施を急ぎ、民間投資の参入分野を確実に広げ、民間投資の参入を制約する障害をさらに取り除き、公共事業や社会事業など経済・社会発展の脆弱な部分への民間投資の参入をサポートする。(3)投資に対する管理を強化し、改善する。部門間の合同作業・規制と情報共有メカニズムを構築し、健全化し、用地、環境評価、省エネ、融資、産業政策などの審査をより厳密化する方法を検討し、銀行貸付金の新規着工プロジェクトに使う割合を抑制する。「両高」(高エネルギー消費・高排出)や、生産能力過剰となっている業種の新規着工および実際にそぐわない「治績プロジェクト」の建設を厳しく規制する。投資管理に関する法整備を加速させる。政府投資プロジェクトに対する検査、監査と特別会計検査を強化し、法規違反行為を厳しく取り締まり、資金の安全と工事の質を確保する。
食糧や食用油など重要な商品の市場供給と価格の安定化をはかる。主要農産物市場のコントロールを強化し、備蓄の活用や輸出入の調整をメリハリをつけて柔軟に行い、食糧や食用油など重要な商品の買付・販売・調達・運輸を円滑に進め、市場供給を確保する。価格に対するモニタリング、早期警報および情勢の分析を強化し、応急対策予備案を完備させ、価格システムを規範化し、世論を正しく導き、市場への期待を安定させ、価格総水準の基本的安定を保つ。
経済運営の調節を上手に行う。動的モニタリングと総合的な分析を強化し、石炭、電力、石油、ガス、運輸の需給が逼迫気味になり、局部的に逼迫したとき、重点時間帯や重点地区の供給が確保できるよう努める。石炭の生産・運輸・需要の整合性を強化し、電力の需給バランスに万策をめぐらし、省・自治区を跨ぐ送電を円滑に進め、電力の需要側管理(DSM)を強め、精製油と天然ガスの総量のバランスと供給の安定化をはかり、重点物資の運輸を確保する。応急物資の備蓄を充実させ、応急メカニズムを完備させ、応急能力の開発を強化する。