■地方政府は「GDP至上」思考を止めねばならない
実際、第12次五カ年計画では経済成長から発展と人間本位の経済成長へとテーマの重点をシフトしている。従って、当局が土壇場で強調している幸福と質的成長というテーマは、新たな経済成長計画と1つになった政治的シグナルと見なすべきだろう。だがこの幸福目標を達成するには、スローガンやキャッチフレーズの考案の他にも、政府がしなければならない事が多くある。その例として、いくつかの省が打ち出した第12次五カ年計画の経済成長目標に着目してみよう。
経済成長目標を一桁に抑えたのは北京市、広東省、浙江省など数省(直轄市)だけだ。自省の経済成長への地方当局の過熱が、これが初めてでないことは明らかだ。だが今回、中央政府は所得増加と経済成長の同調を図るよう地方当局に圧力をかけたようだ。所得増加は消費増加とイコールなのだろうか?そうとは限らない。増加分の収入を貯蓄ではなく消費に回させるインセンティブが必要だからだ。政府の金をより多く庶民のポケットに入れることは確かに有益だが、破綻した社会保障システムをよみがえらせ、強化することも同様に重要だ。
では、GDPへの重視を止める方針を地方政府に実行させるにはどうすればいいのだろうか。1つの方策は、政治的インセンティブを変えることだ。省レベル高官の抜擢・昇進と経済成長目標を切り離すことは良いスタートだろう。これに代り、環境の持続可能性、エネルギー効率、収入と福祉、教育や文化の推進を、GDP成長や雇用と同様に重要な位置に置く。その経済目標を達成するために真剣に政治的インセンティブを変えることができるか否かが、第12次五カ年計画の成否にとって極めて重要だ。中国政府は事実上「GDP至上」時代に幕を引く考えを表明しつつある。だが全ての中国人がこれに賛同、またはその必要性を認めているわけではない。
「人民網日本語版」2011年3月3日