国際テロ組織の指導者、ビンラディン殺害後、10年間、同組織を主な作戦対象としてきた米軍事機関は方向を見失ってしまった。大幅な支出削減を迫られているオバマ大統領と議会は、軍事費を獲得するため、次の強大な架空の敵を見出す必要に迫られている。近年、米軍の高官は事あるごとに、中国とロシアに改めて照準を定めると表明している。
米ディフェンス・ニュース紙は25日、モーズリー前空軍参謀総長は、イスラエルの研究所で行われた空軍力の発展に関するセミナーで、米軍は将来、中国かロシアの軍事システムと衝突する可能性が非常に高いと吹聴した。
米空軍はF22の大規模な装備によって中国とロシアに対する絶対的な優位性を維持する必要があるとし、ゲーツ国防長官に「戦争幻想狂」と叱責を受け、辞任した。モーズリー氏は、「私の息子や婿の時代になれば、中国か、ロシアの軍事システムと交戦する可能性がほぼ100%」と発言している。
仮想の敵を中国と想定するのは彼だけではない。ワシントン・ポスト紙は26日、米上院軍事委員会の公聴会で、中国の新型ステルス機、弾道ミサイルなど先進兵器による「脅威」が会議の主な内容となった。ペンタゴンのタカ派の多くは、「ラディンによって米国は国力を消耗しすぎた。米軍はテロ対策を中心に10年間動いてきたが、今後はこの動きを変える必要がある」との認識を示している。ブッシュ政権は中国に対して友好的ではなく、日本、韓国、インドなど中国の隣国と東アジアのミサイル防衛システム構築を推進してきた。しかし、9・11事件ですべてが変わった。01年にブッシュ氏が宣言したあの「比類のない軍事力、強大な経済力、政治力をもつ」米国は今や陰りをみせ、一方の中国は過去10年で大躍進した。
米国はまだテロ対策などの問題で中国やロシアの協力が必要で、このことが衝突の発生を抑えている。しかしポスト・ラディン時代の米国が、より中国やロシアを注視し、その対応に力を注ぐことは間違いない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年5月30日