中国海軍少将、国防大学戦略研究所前所長の楊毅氏
中国と日本の安全をめぐる関係は今、一種難しい状態に置かれており、とくに両国の政治や経済、その他の関係に比べると遅れている。こうした状態をもたらした原因は、第1は、東南アジア地域の地政学が調整の段階にあることだ。第2は、米国のアジア太平洋地域への再回帰のためであり、「新たな均衡」とも呼ばれる。第3は、中日両国間の力の対比に変化が生じたことだ。
中日という2つの国の安全関係は結局いかに対処すべきなのか。中国の台頭は日本にとって果たして、好機なのか、それとも災難なのか。いずれも考慮する必要がある。わたしは、中国が力をつけたことは、軍事力の発展も含め、日本にとって災難ではなく、好機であると考える。なぜなら、力がより強大になった中国は、日本ととともに、西太平洋地域を含めたアジア太平洋地域の平和、安定と繁栄を維持することができるからだ。
●軍事費は安全環境ほど多くない
近年、国際社会は依然、中国の軍事費の増大問題に大きな関心を示している。確かに、軍事費はこの十数年近くの間に2桁の伸びをみせ、多くの人の不安を招いた。実は、周知のように、米国では、貧しい人のほうが太っており、豊かな人は多くがスマートである。貧しい人が肥満なのは、食べるモノが違うからだ。中国は長年飢えをしのび、今ではたくさん食べられるようになった。そのため、体重が急速に増えてきた。だが、中国の肉は脂身が多いため、むしろ筋肉はついてこない。これこそが中国軍事費増大の状況である。
優秀な人材を軍隊にとどめるため、軍事費の3分の1は隊員の質的向上に充てている。また、中国の軍事費も、これまで長年にわたり資金投入が不足していたことから、装備の補充に用いられている。
軍事費と軍事力の増大は事実ではあるが、中国の安全環境と比べれば、やはり多くはない。私はとくに日本が羨ましく思う。国土は狭く、人口は少ないが、軍事費は多い。カギとなるのは、さらに傘をさしてくれる人がいることだ! 中国には傘をさしてくれる人はおらず、そればかりか中国に石を投げつける人がいる。だからこそ、中国は軍事費を増やさねばならないのだ。今後、軍事費はゆっくりと安定、あるいは減少する可能性がある。これが趨勢である。
●シーラインを共同で維持する