資金不足で建設中止となった工事現場
資金不足で建設中止となった不動産
EU債務危機の第一波が収まらないうちに、新たな第二波が立ちはじめている。今年初め、ギリシャの債務危機で不意を突かれた欧州中央銀行とEUは、いまだその余波の中にいるが、歳末になり、今度はアイルランド債務問題が再びユーロの構造的弱点を直撃した。市場は、アイルランド自身の財務的困難だけでなく、ユーロ構造の根本的欠陥の打開策が見つからないことを憂慮している。
アイルランド政府は9月末、国内五大銀行支援拡充で最大500億ユーロを費やすため、今年の財政赤字は国内総生産(GDP)の32%にまで膨れ上がり、公共債務はGDPの100%を占めるという予測を発表、その直後、アイルランドの国債利率は急上昇を見せた。近頃のアイルランド10年国債の利率はすでに9%に達しており、ドイツの同一利率の3倍にも達している。これと同時に、ユーロの為替相場は下落し、4日には1:1.42の高値だったユーロ/米ドルは、16日には、1:1.34にまで下降した。
理性的に見れば、アイルランドの財務問題も大したことではない。なぜなら、アイルランド政府は200億ユーロの現金貯蓄を有しており、少なくとも来年中頃までには、今ある全ての元利を返済することができる。また、アイルランド政府はすでに大規模な債務削減計画を発表しており、2011年の赤字はGDPの10%以下にまで抑えられる見込みだ。更に、アイルランドのGDPのユーロ地域16カ国に占める割合はわずか2%足らずであり、「欧州金融安定基金」の庇護下において、アイルランド国債は、まだ安全圏内だ。
しかし、市場の敏感な神経は、そんなことにはお構いなしで、アイルランド債務問題は、国際的な話題へと急速に発展していった。そこでは、アイルランド自身の経済財務問題への心配よりも、ユーロ地域やEU救済制度への不信感が高まっていると同時に、ユーロ構造の内在的欠陥を再び露呈することになった。