深層問題が顕在化 積み重なる課題と変革の嵐
長く続いた世界経済の「北高南低」、600兆ドルのバーチャル経済と60兆ドルの実体経済のかい離、米ドル本位による取引、決済、準備通貨の役割の衝突、ユーロと財政政策の分離…。
危機が勃発し、繁栄が後退、世界経済、とりわけ先進国における深層問題が顕在化。また、それら問題が錯綜し、複雑化、多様化した様相を呈した。
危機の背景にあるのは、先進国における金融機関、企業、家庭、政府の過度なレバレッジ化(ある資産から更なる富を生み出す行為)。バーチャル経済と実体経済がかい離し、実体経済は金融システムの崩壊によるしっぺ返しを受けた。危機に対処する中で、金融システムの欠陥が国債のバブルに変化、従来の危機に新たな問題が加わった。一部のエコノミストは、「レバレッジ解消、債務解消は簡単ではない。10年かそれ以上の時間は必要となる」との見方を示している。
学者が形容したグローバル化の「黄金の10年」においては、貸付の急速な拡大が世界経済の急成長を実現させたが、一方で、成長ポテンシャルを使い果たし、深層の問題を見えなくしてしまった。横断的にみると、グローバル化によって世界経済の南北差が埋まることはなく、溝は反対に広がってしまった。また、縦断的にみると、一部の先進国は構造調整のチャンスを失い、危機の勃発により福祉レベルが後退した。