経済発展に対する基本的認識が変化したことにより、日本各界の現在の経済に対する認識も変化してきている。その最たるものは、政界から経済界まで頻繁に「産業空洞化」の要因と影響に関するものであり、その結果、彼らは共通認識を持つにいたった。国内企業が海外移転する趨勢はもう後戻りできないというのが日本の多数意見だ。もし政府がこの流れを阻止した場合、得より損のほうが大きくなる。
しかし、海外移転の速度や流れをコントロールしたり、核心となる技術や重要な産業の流出を防止したりするのは有効だ。これらこそ、政府が早急に取り組むべき課題である。こう見ると、これまで国内企業の海外移転問題に対し「徹底した引き止め策」と採っていた日本政府は、企業の持つ生存能力をうまく利用しながら、生産拠点を海外に移す企業を励まし、民と官が協力し合って新たな発展を目指すようになっている。
特筆すべきことに、日本政府のこのような態度の変化は、単純に市場ルールに従った結果ではないということがある。政府が国内企業の海外発展を促すのは、国内産業発展の指導を放棄したわけではなく、「守りから攻め」の戦略に転じたからである。分散化や人員整理で弱体化した企業や産業を今後の産業見直し政策の適用対象外とすることで政策の方向性を明確にし、効果的な政策にして、その普及に努める。これは同時に、新政策の実施に伴って生じるコスト流失を防ぐこともできる。経済政策で生じる利益を最大化しようとしているのだ。
2.「技術で市場を創造する」理念