莫言氏は以前、「物書きで生計を立て、家を買うのは、今となっては極めて困難なことである。物書きで郭敬明(中国の若手作家)のような生活を送れるのは、中国全土を探しても郭敬明ただ一人だろう」と言っていた。2011年、ライトノベルで多大な女性読者の支持を集める郭敬明氏は、所得額2450万元で中国人作家の長者番付である「中国作家富豪ランキング」のトップとなった。同番付のトップ10にランクインしている作家はいずれも、娯楽的要素の強い大衆小説の作家であり、青春・ファンタジー小説、ミステリー・アクション小説、職場や仕事をテーマにしたサクセスストーリーを描く小説などが多い。富豪作家に「社会的責任からの逃避」というレッテルを貼るのは、少しばかり酷であるかもしれないが、「莫言氏の家を買う」というエピソードは、「理想主義を追求する文学の創作に励み、運よく偉大な賞を受賞するよりも、現実社会に迎合して読者の好む小説を書き、大金を稼いで豪邸を買うほうがよっぽど現実的で効率的である」というもの悲しい忠告を与えてくれた。
高騰する住宅価格がもたらした悲惨な結果は、既に周知の事実となっている。中国人は日々焦燥感に駆られ、一時も安心することができず、寛容な気持ちで穏やかに暮らすことができなくなっている。家を買うために、強大な仕事のストレスに耐え、高額なローンを背負い、ぎりぎりの節約生活で人生を送っている。大きな圧力の中で、「命の意味」や「生きている価値」を考える余裕や精神力など、どこにあると言うのだろうか。現在、中国国内の書店には、莫言氏の作品を求めて大勢の人が殺到しているが、時間が経てば、また以前のように冷めるだろう。莫言氏自身も言うように、「莫言ブームは長くても1カ月しか持たないだろう。後は忘れ去られるだけだ」。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年10月17日