前新華社東京支局局長 冮冶
北海道札幌市内の観光馬車
我々から見ると取るに足りない些細な事柄であっても、日本では全国民に知れ渡り、世論が盛り上がることが往々にある。公務員が出張で飛行機を使った場合のマイレージ取得の自粛要請に関するニュースも、これに類する事柄である。
2008年6月、町村信孝内閣官房長官(当時)は記者会見で、国家公務員が航空機を利用して出張する際に、航空会社が利用者に還元するマイレージ・ポイントの取得、使用を自粛することを決めたことを公表した。
日本の公務員の一体どれくらいが、出張でマイレージ・ポイントを取得しているのかは、その報道からは窺い知ることはできないが、政府自らがこの行為の自粛を要請したことは、きっとその数が決して少ないものではないことを語っている。
実を言うと、政府がこの決定を下すにあたって、公務員の出張マイレージと性質を同じくする「タクシー接待」の問題が絡んでいる。当時、国家公務員がその立場を利用して、甘い汁を吸っていた行為に対して、日本のメディアはこぞって無情な批判の報道を行っている。
「タクシー接待」とは、タクシー会社あるいは個人タクシーが、長期的な固定客を捕まえるために実施する、少し常識を超えた接待サービスのことである。一般的には、乗客にビールやジュース、つまみ、金品などの提供をする。だが、この「固定客」が公務員であることが問題なのである。
各省庁に勤務する職員の多くが、残業で深夜の帰宅となることが往々にある。終電に間に合わなかった場合、公費でタクシーを使い帰宅できるという規定がある。普段よく深夜まで残業するタクシー帰宅グループは、タクシー会社あるいは個人タクシーにとって「上客」であり、タクシーの運転手も固定客を取り込もうと、ビールの供与など、あの手この手のサービスを行っている。問題なのは、このタクシー代である。公費イコール国民が納めた税金であり、税金で甘い汁を吸えば、それは「取るに足りない些細な事柄」ではなくなってしまう。
この事件は、野党議員により調査が行われ、公開され、メディアにより取り沙汰されるようになった。国会の内外、一般国民からも批判の声が上がり、政府も無視できない問題となり、各省庁で調査が行われた。その結果、想像を絶する「タクシー接待」の実態が浮き彫りとなったため、批判の声が高まったのは至極当然のことであった。