前新華社東京支局局長 冮冶
取るに足らない些細なこと
知り合いのある留学生の話だ。その留学生は大学に行く途中、駅に着いた時に財布を忘れたことに気がついた。取りに戻ると授業に間に合わない。そこでその留学生は駅員に事情を説明してあとで払うと言うと、駅員は切符代のお金を彼女に渡した。何の借用書もない。ただ信頼だけが頼りだ。日本では時に信頼関係はこんなにも簡単である。
ある時、支社の家族が定期券を亡くし、駅の忘れ物預かり所で受け取ったことがある。この定期券はスーパーに落ちていて、拾った人がスーパーに届け、スーパーがこの定期券が使える区間の一番近い駅に届けた。拾った人が誰なのかはやはり分からない。こうしたことを聞くと本当に頭が下がる思いがする。
私が最も典型的で人に優しく便利な考慮だと思ったのは、実際には取るに足らない些細なことだった。浴室のシャワーカーテンを吊るす伸縮棒が壊れ、妻と一緒に買いに行った時のことだ。長さ1メートルほどの伸縮棒は重くはないが、持ち帰るのには少し面倒で、担ぐと見栄えは悪いし、手に持てば人にぶつける可能性がある。
実際そんなことを考えなくても店の人は周到だった。伸縮棒を包装し、その上から適当な位置にテープを巻きつけた。そのテープには指一本を引っ掛けられるような物がついていて、指を引っ掛けて持つと伸縮棒は体の脇に寄り添い、誰にもぶつからず、持ち損ねて落とす心配もない。巻きつけられたテープは特製だった。
中国ではここ数年、都市建設の急速な発展で人に優しく便利な対策がいたるところで見られるようになった。だがそれは止まることなく続けていく必要がある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年4月15日