■中国海軍艦隊の活動領域を圧迫
歴史を振り返ってみるのもいいだろう。列島線の概念は米国が第2次世界大戦時に提起したもので、当時は日本に対するものだった。朝鮮戦争以降、米国とその同盟国は、列島線を用いて中国や旧ソ連を封じ込めた。北アリューシャン列島、日本列島、沖縄諸島、中国の台湾、フィリピン、インドネシアからなる列島線で、中国や旧ソ連の進攻を防ぐと同時に、中国や旧ソ連の太平洋への進入口を塞ぎ止めたのだ。第一列島線の海域には海底ソナー網や各国海軍の防衛探知システムが設置されており、潜水艦は第一列島線に近づけばすぐに発見・追跡される。第一列島線の外には、ハワイを中心とする第二列島線がある。つまり「列島線」は地理的意味もあるが、それよりも政治的・軍事的意味が強い。列島線への軍配備によって、アジア大陸各国に対する海上包囲網を形成し、中国海軍艦隊の活動領域を圧迫しようとするのだ。
最近日本は、最南端の与那国島駐留軍の増強を決定した。与那国島は八重山列島南西端の島で、台湾の東に位置する。まさにこの島が、台湾北部や大陸の東中国海側と、外洋とのつながりを遮断しているのだ。与那国島への軍駐留は、自衛隊の配備が500キロ南方へ拡大することを意味する。
地理的に見ると、中国海軍は大陸から第一列島線までの大陸棚海域内に閉じこめられており、「黄水」海軍とも呼ばれている。第一列島線は基本的に大陸から200海里以内に位置する。出口は6カ所しかないうえ、いずれも米日のコントロール下にある。