----北京での4年間の収穫と心残りをお話しいただけますか。
私は楽観主義者を自認しています。ですからいつも自分を幸運だと感じており、基本的に心残りな事はありません。日中関係においても、私個人においても、大きな収穫がありました。心残りについて言うなら、両国民間の感情や相互理解の促進がまだ不十分な点でしょうか。それから、中国の全ての省と直轄市を訪れましたが、チベットだけは行ったことがないのも心残りです。チベットの風景を見に行きたいと妻に何度も催促され、2回準備もしましたが、そのたびに抜け出せない用事が入ってしまいました。いずれにせよ、いつか夫婦で行けると思っています。
収穫についてですが、在任中の4年間に中国には大きな変化が生じました。たとえばオリンピックや万博、そして特に経済水準の向上によって、中国や中国の人々の世界に対する認識に大きな変化が生じました。これと同時に、世界も中国の重要性を認識し、より多くの国々が中国のリーダーシップに期待するようになりました。こうした変化を北京で自ら感じ、考えることができたのは、外交官として大きな収穫です。また、個人的にも中国や中国の人々に対する理解を深め、多くの中国の友人を得ることができました。
もちろん、より重要なのは国と国の関係です。06年の安倍晋三首相による「氷を割る旅」はとても重要な出来事でした。当時、天安門に日本国旗が掲揚されるのを見て、多くの在留邦人が感動に涙しました。私が調べてみたところ、前回の日本の首相による公式訪中は1999年の小渕恵三首相によるものです。そして「氷を溶かす旅」「春を迎える旅」「暖かい春の旅」が続きました。双方は戦略的互恵関係の包括的推進に関する共同声明も発表しました。これは新時代の日中関係にとってとても重要な枠組みです。この枠組みがあることで、日中関係は今後20年の間順調な運営が期待できます。在任中にこうした成果があったことを、とても光栄に思っています。