上海万博日本国家館館長 江原規由
このところ、万博会場内では暑さがウナギ登りの状態です。会場内の「海宝」が猛暑で顔をゆがめているようで、帽子でもかぶせてやりたい衝動にかられるほどです。
来場者も7月21日に3000万人の大台に乗りました。会場内は、パラソルが行き交いカラフルになりましたが、暑さをしのぐのは至難の業です。
キュウリの効用
会場内ではこうした猛暑しのぎの工夫や生活の知恵によく出会います。先日、湖北省の活動日に参加するために、宝鋼大舞台に行きましたが、会場には氷柱がいくつも備えられていました。四角形の氷塊が見る見るうちに丸くなっていくのを見ていると、涼しい気分にさせられたというより、かえって暑さを意識させられてしまいました。
暑さの大敵は熱中症でしょう。会場の要所に水飲み場が設置されており、水分摂取は比較的容易ですが、中国人の水分補給で特異なのがキュウリです。会場内では、キュウリをかじりつつ入館を待っている人によく出会います。コンビニでは水分補給用のキュウリも売っています。一度買って食べましたが、確かにのどの渇きを癒すのに一理あると実感させられました。
昼間の猛暑も夕刻ごろにはややしのぎやすくなります。この頃から万博会場に繰り出し、万博軸や各パビリオンの光のショーなど見るのも、上海万博の楽しみ方の一つとしてお薦めです。
先進技術にも熱中症あり
傘をさして水飲み場へ
さて日本館ではどうでしょう。暑さ対策の一つとして、来館したみなさんに「うちわ」を配っています。これで一生懸命扇いでもらえれば、少しは暑さしのぎになります。また、建築技術的には、打ち水や縁の下といった生活の知恵が活かされています。雨水を地下に貯水し、それを屋根に散水することで館内温度を下げる手助けをする設計ですので、猛暑の万博会場が、その試運転や実験を通じて改良、効率アップするための良い機会になってほしいと、日本館の紫色の屋根を見てつくづく感じています。
また、日本館内には、先進技術(機械・機器、ロボットなど)が展示・実演されていますが、技術が最新になればなるほど、温度や湿度に敏感になるようです。
ある時、冷却水の送水が滞ったことがありました。先進技術のバイオリンを弾くロボットたち(機械・機器)はセンスで扇ぐこともキュウリを食べることなく黙って実演していましたが、館内の温度がこれ以上上がると、実演ができなくなる寸前、冷却水の送水が再開されました。人間の平均体温は概ね36.5度程度でしょう。体温が上がれば体がきつくなります。冷却水の一件で、先端技術を駆使した機械・機器にも体温があり、熱中症の危険があると気付きました。
目下、上海万博主催者側も各パビリオンも暑さ対策に余念がなく、参観者の暑さ負担を軽くする術を考えていますが、参観者は、万博会場は「思ったより暑い」という意識で出かけていただきたいと、黄浦江の向こう側にある巨大な煙突温度計を見て感じています。
人民中国インターネット版 2010年8月13日