では、日本の企業が中国で競争に勝つために必要なことは何だと思いますか?
さきほどの回答を利用しますと、競争優位性を築く前提として「中国事業の真のリーダーをつくる」「中国法人の権限・責任を高める」「中国人登用の仕組みを整備・運用する」ことが必要だと思っています。中国の方々の知恵・知識・行動力を企業活動の根幹にしっかりと組み込む、環境変化に柔軟かつ素早く対応するために意思決定権を中国法人が握る、これらを自分の責任の下にやり切ってくれるリーダーを持つ、要はそういうことです。違う角度から捉えますと、このことは日系企業の「現地化」、果ては「内資化」を意味します。人間で例えますと、上述の3つの取り組みは「体」をつくることに該当します。中国市場で正しく行動するためには、日系企業はそのような「体」をつくっておかなくてはいけないと考えています。
そして、次は「頭」です。「体」をいくら整えても、ようやく正しく動ける状態を作ったに過ぎません。「頭」、これは中国事業の戦略を考えることを意味します。各業界、自社の状況に応じて、成功仮説を構築する必要があります。現在地を把握し、中国市場での将来のあるべき姿を描き、あるべき姿を実現するまでの「道程」を考えること、これらの作業に取り組むことが求められます。
日系企業の場合、日本市場でやってきたことをそのまま中国に持っていこうという傾向があります。しかし、中国と日本は違う市場ですから、あまりに日本の論理に引きずられて突き進むと成功は遠ざかるばかりです。私の関与したプロジェクトでも、「御社の日本事業の強みは、現在の中国市場では通用しない」とお伝えしたプロジェクトがあります。しかし、先入観を持たずに見つめてみると、中国市場に通用する意外な強みを持っていたりするものです。こうした中国市場で通用する強みを起点として戦略を描き、それに従って行動していく。常に戦略と現実のズレを認識し続け、必要があれば戦略を修正する。こうした基本の「筋」を外さない企業は、中国市場での競争に勝っていける確率は高いでしょう。
今後の抱負を教えてください。
「変革の請負人(Real Change Agent)」としての価値を中国で提供すること。CDIの「魂」を持つ仲間を中国の地で多く育てること。そして、中国の社会に貢献できる「中国企業」としての地位を確立することです。
我々自身も、中国に於ける成長の道筋の探索者として、この3つの目標の達成に向けて真っ直ぐ進んでいきたいと思っています。
日本企業は日本のやり方をそのまま中国に持ち込む傾向があるが、それではうまくいかないときがある--。川崎さんの言葉には大きくうなづかされた。これは、企業に限らず、日本人がよく陥る失敗ではないだろうか?地理的には近いが、大きな違いがある日本と中国。日本にこだわりすぎず、うまく適応する柔軟性が大切なのかもしれない。
ちなみに、川崎さんの考える中国企業の特徴は「成長に貪欲」「ただでは転ばない」「やってから考える」だ。これは、成長の激しい今の中国で上手に生きていくうえで、全ての人にとって必要なことではないだろうか。とても勉強になるインタビューだった。(人民網日本語版記者 八島)
プチアンケート
・あなたの出身地は?
茨城県つくば市
・中国滞在歴
2年半
・一番好きな中華料理は?
湖南料理
・中国で一番好きな都市は?
桂林、陽朔エリア
・中国にあって日本にないものを1つ挙げてください。
楽観的な「失敗観」
・中国を漢字一文字で表すと?
「包」 ありとあらゆるものを一つに包み込んでいる。
「人民網日本語版」2010年9月3日