「ここで働いて5年になります」
その女性の店長は、まるで自分とは関係ないことを話すかのような口調で言った。夜のシフトは主に男性スタッフが担当するのだが、店長である彼女はやはりお店が気にかかる。このカフェが閉まったらどこで仕事をするのかも悩みの種だ。大地震の後には消費者の購買意欲が一気に減退、街中には特売広告があふれた。新規オープンするお店などほとんどなく、仕事探しは難航するだろう。
ネットカフェを維持していくのはもっと大変だ。いつもならもっと利用客がいたはずであろう夜、今は20あまりあるそのブースの半分以上が空のままだ。客層はというと若者中心で、ここに泊まるというよりはただつぶしのために来ているようだ。私は別の日の昼間にも来たことがあるが、その時お客は一人もいなかった。東京でこの規模の店舗を維持するのは簡単なことではなく、家賃や光熱費だけでも相当の金額だろう。一人あたりの利用客がもたらす利益はほんのわずかだから、客数が減ることは店にとって大きなダメージとなる。
閉店を決めたのはオーナーなのか店長なのか、いずれにせよネットカフェという商売を今後するつもりはないようだ。5年間営業したことでパソコンは減価償却がほぼ完了したが、机などは丁寧に扱われていたのだろう、まだ十分に使える状態だ。でもそれを欲しがる人はいない。
その店は3階建ての2階部分にある。店長は3階に住んでいるのだろうか。2階から3階へと続く階段にはテレビや小型スクリーン、漫画などが置かれている。「ご自由にお持ちください」と書かれた紙がカフェの入り口に貼られているが、今のところ誰かが触れたり持っていったりした様子はないようだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年5月13日