文=コラムニスト・陳言 | 勝又依子(翻訳)
4月、古くからの友人の家に孫娘が誕生した。名前は“光”あかり。
昔前の日本人女性には“光子さん”がたくさんいた。私でもすぐ何人か思い浮かべることができる。たとえば女優の森光子さん、ピアニストの内田光子さん、政治家なら東京都議の西崎光子さん、など。しかし私のその友人は彼女たちの例には習わず、最後に“子”を加えずに“光”と名付けた。
光ちゃんは友人の家に大きな喜びをもたらした。とてもおりこうさんでほとんど泣くことがないとのこと。生まれてまだ1カ月にも満たないから、起きている時間よりも眠っている時間の方が長いわけだが、一度その瞳を見開けば、家族みんなが光ちゃんの周りに集まり、その顔をいくら眺めても飽き足らないといった様子のようだ。
友人は数年前に還暦を迎えている。彼が昔聞いた、父親世代に起きた出来事を私にも話してくれたことがある。
「父は、1945年に終戦を迎え、やっと家の灯りを点せるようになった当時の話をしてくれました。戦争中は空襲があるので家の灯りは厳禁で、戦争が終わってやっと明るくなったと。だから父の世代はみなその明るさがとても幸せなものに感じたのです。彼らにとって光とは家の灯りのことであり、その灯りは平和や幸せの象徴のようにも見えたのでしょう」