震災後、日本の結婚相談所への問い合わせが、特に女性から増えている。考えてみれば、余震が続く中、誰かがそばにいてくれたらどんなに心強いことだろう。街頭での女性に対するアンケート調査でも、いちばん人気なのが力強さを持つ男性、つまり肉体労働に就く男性が以前より注目されるようになった。体力がなければ、瓦礫の下から人を救い出すこともできないというわけだ。
張愛玲の作品『傾城の恋』は、香港が日本の攻撃を受けていた頃、もともとそれぞれ、相手と別れて今後は自分の道を進もうと考えていた男女が、爆撃を受けたことで、ともに別れられず、寄り添って生きていくという話である。
上海出身の胡さん(29歳)は、裕福な家庭に生まれ育ち、美人だったため、好意を寄せる男性も絶えなかった。最近急接近中の彼もいるが、上海出身でもなく、裕福な育ちでもないため、いっこうに決心がつかなかった。それは、彼女の虚栄心というより、家族の要望だった。上海では、両家の家柄のつりあいにうるさいのだ。彼、丁さん自身に対しては、やさしくて思いやりのあるいい男性だと思う一方で、上海で家も車も買えない彼を、家族が受け入れてくれるかどうか心配だった。
3月11日、彼女は職場にいたが、地面が動き山が揺れ、彼女の美しい顔がゆがんだ。携帯電話もつながらず、彼女は同僚とともに会社に留まっているしかなかった。夕方になり、ようやく電波が復旧すると、丁さんから彼女を迎えに新宿駅まで歩いてきたというメールが入った。会社を出て、新宿駅へ向かう途中は、電車に乗れず歩いて帰宅する人たちの列であふれていた。
地震発生後、電話の不通が分かるとすぐに新宿駅へ向かって歩き出したのだという彼に、彼女は感動した。その後、余震が怖いため、彼女は彼を家に入れ、二人は同居生活を始めた。原発事故発生後、みんな次々に東京を離れる中、IT関係の仕事をしている丁さんは中国とのやりとりも頻繁に行っており、出張等の理由で帰国できそうだったが、純日本企業に勤める胡さんは、身動きが取れなかった。この時、丁さんは日本に留まることを選んだ。東京の余震が薄れ行く中、二人の結婚の意志は固まった。胡さんの家族はまだ、ここで誤った選択をして将来後悔するのではと反対しているが、彼女は両親に、もしこの選択が過ちでも、二人で一緒に受け止め、それを押し通していく覚悟だと話したのだという。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年6月13日