東日本大震災により、各工場の生産ラインの停止や減産が相次ぎ、経済的に大きな爪痕を残した。
だが、震災の影響はそれだけに止まらない。自動車や家電製品など数多くの製品が、生産面でも市場面においても大きな影響を受けたままだ。震災後すでに数カ月が経過しているが、市場におけるその余波はまだ大きく、しかも拡大しつつある。例えば、人気の日系自動車は在庫がないか、値上げされているかのどちらかだ。日系自動車の販売代理店によると、今ある在庫を売るだけで、いつ入荷するのか見当がつかないという。そのような状態は、ライバル社にしてみれば市場シェアを奪う絶好のチャンスであり、日系自動車は、なす術のない危機に見舞われている。
未曾有の大震災という「不可抗力」の影響に対し、今後どのようにしてポジショニングしていけば、危機に耐え得るブランドを再構築することが出来るのか?これを機に値上げすることは、果たしてブランド力を高めるチャンスになるのか?月刊ビジネス誌「中外管理」は、マーケティング戦略家で、「ポジショニング」というコンセプトを世に伝えたアル・ライズ氏にインタビューを行なった。
現状にもがくだけの日本ブランド
「中外管理」取材記者(以下、記者と略):周りの市場の状況を見て、震災後の日本ブランド危機への対応についてどのようなお考えをお持ちですか?
アル・ライズ氏(以下、ライズ氏と略):米国の日系企業のほとんどが、こうした質問にノーコメントの姿勢を貫いています。製品の供給不足の問題について説明をする訳でもなく、危機に関連した販売対策を実施している訳でもありません。
これは、よくない印象を与えます。良い悪いに関わらず、どのようなことが発生したとしても、企業は市場に対し常に透明性を保つべきなのです。今置かれている状況をきちんと説明し、今後の対応について告知しなければならないのです。
真に危機に陥れているものとは?