日本人の「南京大虐殺」に対する認識①東京審判での日本側弁護士
東京裁判後、南京大虐殺被害者数30万人が定説に
しかし、日本側の弁護士が弁護を放棄した際、当時の中国政府がそれに甘んじる形で事件立証の努力を続けず、曖昧に終結させてしまったことも特筆すべき点である。もともと、中国政府は東京裁判をある種の復讐手段としてしか捉えておらず、ソ連政府のように、東京軍事法廷を日本帝国のソ連に対する全ての行為を詳細に述べる演壇とはしなかった。(これにより、日本の右翼は今でもシベリア出兵から9・18事変までの歴史を覆せずにいる。それはソ連人がこの歴史について当事者である日本人の供述を得、それを動かぬ証拠としたからである。)中国政府はこの点において、詰めが甘かった。
南京大虐殺に加わった十六師団は、後にレイテ島戦役中に米軍によって滅ぼされ、13000人いた兵士たちは620人にまで減った。マッカーサーが中国政府に対し、これら残りの兵士の中から南京大虐殺の実行者を探すのに協力するよう求めたこともあったが、積極的な回答は得られなかった。
これにより、東京国際軍事法廷が最後に出した判決書に矛盾点を生み出す結果となった。判決文の中に、「前6週間において南京周辺で殺害された非戦闘人員は20万人以上、性的暴行の発生は2万件以上と見られる」とあるが、松井石根本人に対する判決文には「数千名の婦女が性的暴行を受け、殺害された被害者数は十万人以上」となっている。中国政府が、この明らかな矛盾点に異議を唱えなかったことで、後の「南京大虐殺被害者数未定」という潜在的火種を残すことになってしまった。
実は、東京軍事法廷において正式に「30万」という数字が出てきたことはない。「20万」の方は、許伝音博士の法廷における証言「一般的に20万前後と考えられる」から採られたものである。「30万」は、南京軍事法廷の元第六師団師団長の長谷寿夫に対する判決文で出た数字である。
南京軍事法廷と東京軍事法廷の審議時期はほぼ同じである。東京裁判後、南京大虐殺被害者数30万人が定説となり、日本でも異議を唱えるものはなく、せいぜい一部の人々が南京大虐殺について語るとき「数十万人もの人々を殺害した」と口にする程度だった。30万という数字を受け入れない人も、東京裁判の結果は受け入れている。
(つづく)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年3月5日