2010年以降、米国は東アジアへ重心を移し、中国の隣国との同盟関係を強化、中国の周辺外交は一時主導権がなくなった。ただ、米国が東アジアで合同一致の中国対抗勢力を形成するのは難しいと筆者は考える。その理由を次に挙げる。
まず、東アジア地域の対峙陣営はほぼ瓦解、経済協力がその瓦解の主な力になっている。表面的には2010年以降、米国は韓国と日本を手なづけ、軍事同盟関係を強化したが、それと同時に中国は米国に代わり日韓の最大の貿易パートナーとなった。さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易圏がスタートし、中日韓自由貿易圏の交渉も日程に上がっている。米国が東アジアへ重心を移しても同地域の経済協力態勢を変えることはできない。
中国、日本、韓国はいずれも東アジア地域の大国で、三カ国ともそのうちの1カ国が単独で大国化するのも、米国の機嫌をとるのも望んでいない。東アジアの国々は経済面では中国の景気に便乗し、安全保障面では米国の庇護を受けたいと思っている。
次に、東アジア地域の範疇は地理的空間を越えている。インド、ロシア、オーストラリア、ニュージーランドも政治・経済的な意味では東アジアに入る。ASEANが推進する東アジア首脳会議(EAS)にはすでにこうした域外国も加わっており、加盟国数の増加によって集団行動が難しくなってきている。これほど多くの国がまとまって中国をけん制するとなると、米国は多大な代償を支払わねばならなくなる。
集団行動の課題を克服する2つの方法としては、魅力的な褒賞か人が怯える懲罰を与えるか、行動に参加する国の数を減らすかだ。米国の国力には東アジアの国に褒賞を提供し続ける力は残っていない。東アジア地域での抱き込みと小グループ発足という手が比較的効果があるだろう。昨年12月に開かれた米日印3カ国会議が今年は東京で開催される。しかし話し合いからメカニズム構築までにはまだ道のりは長く、東アジアの問題は中国と切り離せないことはインドも日本も認めている。今年2月、中日印3カ国はソマリア沖の海賊対策協力で合意した一方、米日印の連盟は構想に過ぎない。