『環球時報』はこのほど、金嬴女史の「福島こそがアジア太平洋地域が最も関心を寄せるべき“島”」と題した文章を国際論壇コラムに掲載した。金女史は、東日本大震災後に発生した福島の生態危機は東アジア全体に影響を及ぼしたと見ており、筆者もこの見方には賛成である。釣魚島問題は1972年の中日国交回復前にすでに存在し、2010年に漁船衝突事件が発生するまで、釣魚島問題と中日関係の発展が並存する状態は38年間続いていたことを認識しなければならない。釣魚島問題は中日関係のすべてではなく、そのほかに、互恵・ウィンウィンにつながる多くのことを着実に行う必要がある。
金女史は文章の中で、福島の原発でチョウの遺伝子変異、プルトニウム238の検出、放射性物質の濃度の大幅上昇、周辺海域の魚類への影響、その影響が北米まで及ぶなどの状況があったことに触れ、「日本はまずその責任を負うと同時に、豊富な核技術の経験がある中国、ロシア、韓国などの国に日本への支援を呼びかけるべき」と主張した。中日両国ないしアジア太平洋地域の人々は、海洋環境、温暖化、食料安全保障、原子力発電の安全、エネルギーなどのこれまでなかった安全問題の厳しい試練に直面しており、共同で対処する必要がある。これは人類が共有する地球を救うための目下の急務である。
ところが残念なことに、中日国交正常化40周年にあたる2012年、日本の右翼と政府は米国が「アジア太平洋回帰」戦略を進める中、大局を顧みず、国内の有識者による理性的な主張を無視し、釣魚島問題をめぐって極端なナショナリズムをかき立て、中日両国の矛盾を激化させる冒険主義的な行動をとった。「日本を愛する」としているが、実際は「日本を傷つける」行為である。日本のある学者は、「狭いナショナリズムや対外強硬論は確かに国民に一種の喜びをもたらす。経済や社会の停滞が深刻であればあるほど、政治やメディアは国民の不満を国外に向けさせる。しかし、このような浅はかで感情的な世論は長期的な国家利益に影響する」と話したが、まさにその通りである。石原慎太郎東京都知事と日本政府による釣魚島問題における中国への挑発は、確かに「国民にある程度の喜びをもたらす」が、「現在の日本のコア利益」を大きく傷つけることにもなる。逆に言えば、中日の戦略的互恵関係の発展を推進してようやく日本は本当の「国益」を得ることができる。日本側が独断行動を続け、「口げんか」を「取っ組み合い」にすれば、中日関係は国交回復後、さらには戦後もっとも危険な状態になるだろう。
近ごろ起きている中日間の問題は、日系自動車の中国市場での販売にすでに影響している。日本の国民、特に経済界は、中国との経済・貿易関係の発展が日本の震災後復興と景気回復にどれほど重要であるかをよくわかっている。現在80%以上の日本人が中国に好感を持っていないが、同様に80%以上の日本人が中日関係は非常に重要だと見ている。日本政府が対中外交で行き過ぎた行動をとれば、両国関係は全面的な危機に陥り、これは日本の国民が目にしたくない状況である。釣魚島問題を中日の経済・貿易関係に影響させないことも、両国が共同で取り組むべきことである。(中国社会科学院栄誉学部委員 馮昭奎氏)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年9月13日