質問4 終戦からはや67年。両国の若者は戦争体験のない世代になっている。こうした若い世代に何を期待するか。
宮本氏 日本では、歴史学は確実に進歩している。多くの学術材料が発見され、近代史もさらに精緻なものとなっている。日本には多種多様な歴史書があるが、主流の、一級の歴史家の書いた近代史を読んで、私には何の違和感もない。日本の中国侵略の歴史も正面から取り上げている。こういう科学的な重厚な歴史書こそが、後代まで生きのびる。日本の若者は、こういう歴史書を読まなければならない。なぜなら歴史から学べない民族は滅びるからである。中国の若者は、戦後日本が、本当に変化したことを学んでほしい。宣伝でそういうのではなく、私は、一人の知識分子として、心底、そう思い、確信しているからだ。過去のことを学んだ日本の若者と、戦後日本のことを学んだ中国の若者との間には、必ず良い交流ができる。お互いに先入観をまず取り除こう。そしてレセットされた状態で、相手をもう一回眺めてみようではないか。
質問5 今年は中日国交正常化40周年を迎え、両国関係は非常に厳しい情勢に直面しているが、両国関係の現状をどのように認識しているか。両国関係を正常な発展の軌道に戻すために必要なことは何か。
宮本氏 日中関係に何が起ろうと、いくつかの事実を変えることはできない。日本と中国は、永遠に引っ越しできない隣国であり、大国同士である。中国の台頭も未来永劫続かないし、日本の低迷も未来永劫続くものでもない。予見しうる将来、両国は大国であり、アジアのみならず世界全体の将来に責任を負わなければならない。それが経済のグローバル化が実現した時代における両国の宿命なのだ。「和則両利、闘則倶傷(損?)」(注:和すれば両方に利あり、闘えばともに傷つく)は、日中関係の哲理だ。そもそも日中が相争えば、アジアの時代やアジアの平和と発展を語ることさえできない。だから我々は「日中戦略的互恵関係」の構築に同意している。そしてこれを進めていくべきだ。
まず両国は、相手を読み間違えた可能性があるのであるから、これ以上相手を刺激する行為をすべきではなく、冷却期間を置くべきだ。そしてその間に外交的処理をしなければならない。日中両国の国民に理解してもらう必要があるのは、外交の本質は妥協にあるという点である。一つの争点だけではなく、その争点と関係する多くの要素を総合的に判断して、妥協案ができる。一つの争点だけに着目すると“譲歩”したように見える。相手も相手国民からそう見られる。それが外交の宿命なのだ。より多くの国民が、外交というのはそういうものであり、しかし大局に立てば、国家として正しい判断をしていることを理解してほしいと思う。
「人民網日本語版」2012年11月27日