清華大学と北京大学の日本語教師を務める笈川幸司さん。昨年9月に野田佳彦首相(当時)が釣魚島(日本名・尖閣諸島)「国有化」を宣言してから北京でタクシーに乗り、日本人だというとほとんどの運転手が同じことを聞いてくる。「釣魚島は中国のものか、日本のものか?」。何度も聞かれるのでいっそのこと彼は「我是鬼子(わたしは鬼畜です)」と自嘲的に返事をする。そうすると、運転手は何もいえなくなったという。
この1年、中国在住の多くの日本人が笈川さんと同じような状況に出くわしても中国に残って仕事や生活を続けている。笈川さんを含む108人は本出版という形で中国に残る理由を語った。「在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由」が今月日本で発売。この地味な表紙の本は売上が日本のアマゾンの外交・国際関係図書で一時トップとなり、すでに2回増刷した。
◇なぜ出版したのか?
この本を読めば日本人は自分が知っていることの少なさに気づくはず。文字を扱う人は文字の力を信じている。編集者や執筆者たちはこの本が両国関係の悪化を阻止してほしいという思いがある。
◇108人が語る真実の中国
◇「中国嫌い」の感情が薄らぐように
本書の責任編集の一人、原口純子さんは長年中国に住んでいる。本出版のアイディアは彼女から出たものだ。原口さんは北京青年報の記者のインタビューに、「108人の執筆者は中国の18の違う都市で生活するビジネスマンや主婦、学生、芸術家、カメラマン、役者、寿司職人、日本語教師などそれぞれ違う職業の人たちで、矢野浩二さん、佐藤愛さんのような中国である程度有名な日本人もいれば、普通の日本人もいる。そのほとんどが10年から数十年にわたって中国で生活している」と紹介する。
本書は阪急コミュニケーションズから出版され、正式には今年8月30日に日本で発売された。この本を出版した動機について原口さんは、今年4月初めに本書の他の2人の責任編集と話していて3人とも中日関係が悪化した1年で中国在住の日本人が実際に見聞きしたことや感じたことを知る必要があると感じ、執筆者に連絡を取り始めたという。「彼らは即承諾してくれた」と原口さん。
朝日新聞は、より多くの日本人に中国の多彩な一面を知ってもらい、悪化する中国嫌いの雰囲気が変わればという原口純子さんの思いを報道した。
本書の書名「在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由」は執筆者の作品を受け取ってから決めた。それは108人全員が無意識にそのことに触れていたからだ。
◇メディアの偏った報道