◇部下がデモに参加
自社の従業員がデモに参加することは、日本企業のトップにとって心苦しいことだ。山本さんは、昨年9月、顧客を訪問しようと日本大使館の前を通ったらデモが行われていた。その時はまだ理解できたが、大使館に近づくと、大使館の壁にモノを投げているのを目にして、やはり日本人として悲しくなったという。彼の会社の中国人スタッフもこの日の午後にデモに参加し、社内には山本さんともう一人の日本人だけが残された。
もう一人の執筆者、青島イオン経営企画室室長の小野宏志さんは中国在住6年になる。「破壊されたスーパーの復旧日記」という題名で、当時起きたことをすべて記述した。小野さんが山東省青島市で担当する4店舗のイオンチェーン店が昨年のこの時期に襲撃された。2012年9月15日、本社からの指示で日本国籍の社員は自宅待機となった。当時多くの中国人従業員が家族や友人から「日本企業で働かないほうがいい。仕事を辞めたほうがいい」と説得されたらしい。店舗は2週間後にようやく再オープンにこぎつけた。
◇中日関係悪化で入院
矢野浩二さんは日本でかなり論議のある俳優だ。なぜなら彼は多くの中国映画やドラマで「日本鬼子」を演じ、「鬼子専門役者」と呼ばれているからだ。中国の抗日を題材にしたドラマに出てくる日本人の多くは中国人が演じ、残酷で情のない悪人だが、自分は戦争を反省し、悲しむ日本の軍人を演じるよう努めている。「以前演じた日本の軍人で、最終回で八路軍に殺される時に故郷への思いと平和への希望から自然と涙があふれてきた。監督が『カット』を叫ぶとスタッフみんなが拍手してくれた。このシーンは後ですごく問題になった」と語る。
その後、矢野さんはテレビ番組「天天向上」の司会を務め、多くの中国人視聴者の評判となり、街を歩いていても親しく「浩二」と呼ばれるようになった。昨年9月の中日関係の急激な悪化は矢野さんにとってこれまでにない衝撃だった。「契約していたドラマにすべてストップがかかり、出席する予定だった鹿児島での中日両国友好都市イベントが中国側の事情で無期限の延期となった。突然仕事が減り、将来に対する不安とプレッシャーで不眠症になった。日本に出張した時、突然呼吸困難になり、生まれて初めて救急車で病院に運ばれた」と当時を振り返る。
◇それでも残る