◇メディアの偏った報道
◇「中国人に殴り殺されないよう気をつけて」と心配の電話
本書を読み、執筆者をインタビューすると、中国での生活が長く、中国をわりと全面的に理解している執筆者らが、中国人の態度や行為に対する日本メディアの報道は全面的、客観的でない現象が存在すると感じていることがわかる。中日関係が悪化した時に報道されるのは悪い面ばかり。
執筆者の一人、清華大学と北京大学の日本語教師を務める笈川幸司さんを例にとると、昨年9月の野田佳彦首相(当時)の釣魚島「国有化」宣言を受け、一部の中国人が抗議した際、日本メディアは日本車が壊されたり、日系スーパーが襲撃される映像を繰り返し放送した。それを見た笈川さんの姉や親戚、友人は心配して、「中国人に殴り殺されないように気をつけて」と電話をかけてきた。笈川さんは「これが彼らが目にしたものと私が感じたことの違う点で、実際には危険な目に遭ったことなどない」と語る。
別の執筆者で中国で広告会社を経営する山本達郎さんは、日本メディアの報道で家族は中国全土でデモが起きていると思っていたと話す。「周りの日本人は中国との戦争をまったく望んでいないのに、日本のメディアをみるとまるで日本人が非常に強硬で開戦的態度のよう」。
彼が目にした日本メディアの報道によると、70%以上の在中日本企業が中国に残って事業を続けたいとしているのに、その見出しは「30%の日本企業が中国からの撤退希望」だった。「一つのことでも別の角度から見て違った結論を出し、違った感じを与えることができる」と山本さんは語る。
◇中国のいい面を話すのは勇気がいる