◇中国のいい面を話すのは勇気がいる
◇「中国賛歌」の本ではない
山本さんによると、中国で生活したことのある日本人は多くないし、108人の執筆者の見方も日本社会では主流ではない。笈川さんは、こうした本を書くのは勇気がいるという。実際に本書が出版後、原口さんは世論からの圧力を受け、日本の右翼関係者は彼女の出版動機について攻撃を加えた。
売上をみてみると、本書はたった半月で日本のアマゾンの外交・国際関係ジャンルで一時トップに立ち、全図書では一番いいときで24位にランクインした。8月30日に出版してからすでに2回増刷。今後中国語版を出版する予定だが、まだ具体的には決まっていない。北京で行った交流会でも本はすぐ完売した。
「この本を読めば日本人は自分が知っていることの少なさに気づくはず」と笈川さんは語る。「文字を扱う人は文字の力を信じている。編集者や執筆者たちはこの本が両国関係の悪化を阻止してほしいという思いがある」。
もちろん本書は108人の中国在住の日本人が謳う「中国賛歌」ではない。「尖閣国有化」、「反日デモ」、「PM2.5」といった刺激的な文字が表紙を飾り、中国の暗い面を反映した挿絵もみられる。108人の文章にも中国や中国人に対する不満や理解できないことが吐露されている。最後のページには2ページにわたって中国のテレビで放送された抗日ドラマの映像が並ぶ。しかしこれらすべてのいい面と悪い面を組み合わせたものが中国在住の日本人の目に映った本当の中国で、本書が日本でベストセラーになった理由でもある。
◇それでも