福島第一原発の汚染漏れ問題を解決する重要な措置と目されている「凍土遮水壁」の工事が、6月2日に正式に始まった。日本政府と東京電力が発表した計画によると、地下水の建屋への大量流入により高濃度の汚染水が増加を続けていることから、東日本大震災と津波により破壊された1−4号機建屋の周囲約1.5キロに渡る土壌と凍結し、いわゆる「凍土壁」を形成することで、地下水の流入を防ぐことになる。
物理学の原理から見ると、この工事の内容はそれほど複雑ではない。施工計画によると、作業員は地面上に引いておいた、1−4号機建屋の周囲約1.5キロの線にそって、約1メートル間隔で地面に穴を開ける。それから地下約30メートルの深さに、冷却液が循環する約1550本の凍結管を埋め込む。最終的に−30度ほどの塩化カルシウムブラインを冷却液として注入し、数ヶ月の期間を経て周辺の土壌を凍結し、地下水と建屋の間に地下の凍土壁を形成する。この工事は、来年3月末の竣工を予定している。凍土壁の竣工により、毎日建屋に流入する約400トンの地下水が約280トン減少し、汚染水の増加を防ぐ。
しかし凍土壁が予想されていた効果を発揮するかは疑問だ。まず凍土壁技術はトンネル工事などで使用されている、水漏れや崩壊といった事故を防ぐための臨時的な施工方法だ。1−4号機建屋の周辺に建設される凍土壁は、少なくとも2020年頃まで維持される必要がある。その施工と維持の難しさは、想像に難くない。次に、地下水が流れる方向とルートを特定できないため、地下深くに凍結できない場所が出てくる可能性も高い。これらの場所が徹底的に凍結されなければ、凍土壁全体の遮断効果が大きく割り引かれる。それから、凍結管は地下数十メートルに埋められるが、穴が空いたり水漏れなどが生じた場合、手を加えることが難しくなる。アクシデントが発生すれば、工事全体が無駄になってしまう。
上述した数多くの未知の要素とリスクが存在するが、これまでの事故処理の過程において、日本政府と東京電力は不十分かつ不適切な措置により、日本国内と国際社会から批判を浴びていた。日本政府は今回犠牲を恐れず、凍土壁工事を汚染水問題解決の「秘密兵器」にしようとしている。推算によると、工事の施工費は320億円に達する。また竣工後、凍土壁を維持するため使用される電力だけでも、1万3000世帯の電力消費量に達する。
参考にできる前例が一つもない中、これほど大規模かつ長期間の凍土壁工事が始められた。日本政府と東京電力のこの措置は、やむにやまれぬ状況下の大きな賭けと言える。成功すれば、人の力が自然に勝つ快挙となり、失敗すれば、想像もできない結果がもたらされる。凍土壁は果たして汚染水を遮断できるだろうか?全世界がこれに注目しようとしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2014年6月4日