日本人側から見ると、骨の髄まで天皇制軍国主義教育を受け、他国他民族を蔑視し平気で殺したり犯したり奪ったりするような「鬼」になってしまっていたことが、戦争中の「常識」でした。しかし戦犯たちはこの常識を覆し、侵略者としての自らの行為を反省して「認罪」し、本心から「謝罪」して「人間」にもどり、さらに帰国後は困難な生活のなかで「贖罪」のための行動に立ち上がったのでした。これが第二の「奇蹟」です。
この日中両国のどちらから見ても、一見不可能とも思える「常識」を覆して実現した「奇蹟」は、国境と民族を超えた人と人との交流のなかで生まれた人間の素晴らしさを物語っています。私たちは、この物語を日中両国が永遠に仲良く平和に生きていく上での一つのお手本として、語り継ぎ、また歌い続けることが、とても大切なことだと考えます。
(一) 元戦犯たちとの出会い―「人は変わることができる」ことを知った驚き
私は「暫定団長(正式に団が結成されたときに皆で選ぶまで)」ですが(註:2012年3月当時)、一介の中国現代史研究者にすぎません。その研究の一部として「三光作戦」の現地調査を含む日本の侵略戦争の本質とそこでの加害の実態を調査研究してきましたが、その過程で被害者である中国人たちの怒り、恨み、憎しみ等々の激しい感情をも実体験せざるをえなかったのです。
どなたもご存知のように日本の侵略と加害の責任を追及する声は、いまだに中国だけではなくアジア各地で根強く残されています。そして日本では、それを理解して同情し支援しようとする声と運動が存在する反面、逆にそれを否定し反発し対抗しようとする声と動きも根強いです。いやむしろこの逆方向の傾向のほうが、歴史教育、マスメデイア、論壇や一部の政治家たちの主張と煽動によって広がり強まっているとさえ言えるでしょう。これは日本という国が、近隣諸国と仲良く共生していかないと将来の平和と繁栄が望めないと言う、誰でも分かりきっている厳然たる事実に真っ向から反するものです。私は子々孫々の未来を思って憂いにたえません。