そのような時期に侵略戦争と加害の事実を語り、二度と戦争してはならない、日中友好がとても大切だと主張し、語り部として全国を証言して歩くことが、どれほど大変だったか。私のように学生のころから、中華人民共和国を正統な中国政権として認め日中国交正常化を実現せよと主張してきた者にとっても、この元戦犯たちの精神、信念と努力は想像を絶するものがあります。当然、そんな主張を認めない「中国封じ込め政策」を実行していた政府やそれに追随する世論を背景にした妨害、迫害や脅迫が元戦犯たちの職場にも家庭にも旅先にも襲いかかっていたのです。
この人たちの努力を想起すると涙ぐまざるをえません。日中国交正常化が実現するまでの、そしてそれからもずっと証言活動を続けてこられた彼らに、私は(もしそういうものが作られるとすれば)「日中友好交流功労賞」を授与したいです。でも第一級の戦犯を総理大臣にしたり、侵略と加害を否定しいまだに中国を敵視するような政治家を次々に生み出すような政治と社会ではムリでしょうかね。
ですので、私たちは微力ではありますが私たちなりの仕方で、「撫順の奇蹟」を、つまりは今や残り少なくなってしまった彼らの心を、信念を、活動を、少しでも理解する者たちが集って、何らかの形で継承したいと思うのです。「撫順・再生の大地」合唱団は歌という芸術活動を通して、これを実現しようとするものです。それが私たちの心からの願い、すなわち二度と残酷な「鬼」になって戦争するような人間を造らない、二度とお隣の国や民族と殺し合いをするような国にしないという願いを果し、これを子々孫々の平和と安寧のために伝える現在の私たちの決意の表明だと信じながら、歌います。
撫順の奇蹟を受け継ぐ会代表 中央大学名誉教授 再生の大地合唱団団長 姫田光義