【憧れの日本 理想と現実のギャップ】
日本に赴いた中国人の安全事故が多発している。危秋潔さんの場合は旅行中の出来事だったが、近年の中国人の日本での生活状況を見ると、安全リスクのある層は多くが「留学生」や「実習生」であることがわかる。
日本法務省の統計によると、2016年には、8万5千人の中国人実習生が日本で仕事をした。2015年一年に失踪した外国人実習生は5803人で、そのうち3116人が中国人だ。
実習生が日本で仕事ができるのは、日本が、発展途上国の人才が最長3年間、日本で働きながら技能を学習できる制度「技能実習制度」を実施しているためだ。この制度はもともと、日本が外国人実習生を呼び込み、発展途上国に技術を伝えることを目的としていた。だが近年、日本社会の高齢化の加速や労働力の不足に伴い、外国人実習生制度は、企業経営者が安価な労働力を搾取する温床となった。
多くの外国労働者は、日本に行けば高給を手にでき、進んだ技術を学ぶこともできると夢を描く。だが日本に来た後、事実はその夢とは程遠いことを思い知る。実習生が職場で不当な待遇を受けたり、労働災害が多発したり、過度の残業で「過労死」にいたるなどのケースでは、これまでずっと、中国人実習生の割合が最高だった。
実習生の追い詰められた生存環境や、中国人姉妹が異国で命を落としたことに対し、中国のネットユーザーの多くは、哀悼を示し、遺族への慰めをつづっている。だが事実を歪曲し、死者を攻撃する声も一部ではあり、死因を「日本に行ったこと」と決めつけ、その死を「自業自得」と断じている。
健康で温かい情のこもった社会においては、死者を消費するようなこうした「鍵盤侠」(キーボードマン、ネットの話題に便乗して正義を語るユーザー)は、世論と良識の二重の非難を受けることになるだろう。同胞の死より、ネットで鬱憤を晴らし、自分の考えをひけらかす方が重要だというのだろうか。