5.アジア五輪での新設競技種目はアジアに貢献
前述したように初開催の1896年アテネ五輪大会では9つの競技種目のみであった。当時アジアでは近代スポーツに関する認識がまだ薄かった。これらの種目にもアジア発のものはなかった。
アジアで、これまで四度行われた五輪のうち、東京五輪とソウル五輪で新設された競技は、10種目にのぼる(公開競技として登場し、その後正式種目になったものを含む)。これらアジア五輪新設種目は今回の東京五輪の33種目の30%にあたり、その金メダル数は全種目合計339枚の16%に当たる。
アジア五輪で新設された競技種目のほとんどは、アジア人の身体能力に適した種目である。こうした競技種目の増設により、アジア諸国のオリンピックにおける存在感も高まった。2020東京五輪で金メダル獲得数のトップ3に中国と日本という2つのアジアの国が入ったことは、競技種目の新設努力によるものが大きい。
1964年東京五輪以来、アジア五輪新設競技種目が稼ぎ出した金メダル数は、日本の金メダル獲得総数の40%にものぼった。
韓国が1964年東京五輪以来、アジア五輪新設競技種目で稼ぎ出した金メダル数は、同国の金メダル獲得総数の34%にものぼった。アジア五輪新設競技種目は韓国の五輪の成績にも大きく貢献した。
中国は1984年ロサンゼルス五輪で初参加して以来、アジア五輪新設競技種目が稼ぎ出した金メダル数は、同国の金メダル獲得総数の26%にのぼった。アジア五輪新設競技種目は中国の五輪成績に大きく貢献した。前述したように卓球とバドミントンがすでに中国の強い競技種目となっていた。それだけではなく、これまでに柔道、テコンドーでもそれぞれ8枚、7枚の金メダルを獲得した。バレーボールも人気が高く、これまでに3枚の金メダルを獲得している。これらのアジア五輪新設競技種目は中国に金メダルをもたらしただけではなく、人気スポーツとして中国での普及が進んでいる。
アジア五輪新設競技種目には柔道、テコンドー、空手などアジア諸国の歴史文化のバックグラウンドを持つ競技もある。これらの競技種目は、関係国のソフトパワーを世界へ発信する大きなチャンネルとなった。
特記すべきは、こうした新設競技種目が、アジアにおける人的交流をも一層促進したことである。