阪神・淡路大震災後、仮設住宅生活が長期化するにつれ、被災民の心理的な負担軽減が大きな社会問題になった。東日本大震災はさらに原子力発電所事故の不安が加わり、被災民に心理的な重圧を与えている。今後、復興が本格化するにつれ、個人差がきわめて大きい心理的なダメージをどのように軽減していくか。モノの建て直しとは違い、壊れやすいココロの復興は政策的にも重視されなければならず、地域社会の互助精神も不可欠だろう。
そうした意味で、四川汶川大地震の被災地は都市化が緒についたばかりの地域で、農村地域の濃い人間関係が役立っているようだ。中日両国の事情に詳しい北京在住のある中国人精神科医は「都市化が進めば進むほど人間関係が希薄になります。四川地震後の心理的なケアが順調といえるのは被災地が農村地域だったからだと言えるでしょう。しかし、今後、北京、上海といった大都会で大自然災害が発生しないとは限りません。四川地震後の被災民の心理面のトレースは貴重です」と、語っていた。
心理的な復元を助けるのは、衣食住の充足、特に住宅の整備と雇用機会の創出が重要で、復興事業の中で住宅建設に力点を置いたのは道理にかなっている。さらに震災によって離農せざるを得なかった人々に対する、新しい仕事づくりも欠かせない。その意味で、国際住環境フォーラムが汶川県水麿鎮に「ベスト災害後復興賞」を贈ったのは大きな意味があろう。農工業主体だった産業構造を観光業主体に切り替え、被災民に新たな生きがいを提供しようという試みであり、東日本大震災後の東北地方復興の参考例として注目される。(『人民中国』日本語専家 島影均)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年5月27日