二〇一〇年度は第十一次五ヵ年計画の最終年である。これまでの五年間を振り返ってみれば、財政の発展・改革は新しい様相を呈していることが分かる。
財政収支の規模は絶えず拡大し、支出構造は一段と適正化した。第十一次五ヵ年計画期に、全国公共財政の歳入累計額は三〇兆三〇〇〇億元に上り、年平均二一・三%伸びた。一方、全国公共財政の歳出累計額は三一兆九〇〇〇億元で、年平均二一・四%伸びた。国家財政の民生分野に充てた投入が大幅に増額したことにより、都市・農村の義務教育無償化は全面的に実現され、都市・農村住民基本医療保障の水準は著しく高まり、都市・農村をカバーする社会保障制度の枠組みもほぼ形成され、公共文化サービス体系の整備も明らかに加速している。第十一次五ヵ年計画期にわたり、教育、医療衛生、社会保障と雇用、文化分野に充てた全国公共財政の支出総額はそれぞれ四兆四五〇〇億元、一兆四九〇〇億元、三兆三三〇〇億元、五六〇〇億元に達し、第十次五ヵ年計画期に比べてそれぞれ一・六倍、二・六倍、一・三倍、一・四倍伸びた。「三農」に充てた中央財政の支出は累計で三兆元近くにのぼった。
財政・租税政策は充実化されつつあり、財政によるマクロコントロールはさらに強化された。国内外の経済情勢の発展や変化に基づいて、穏健な財政政策と積極的な財政政策を相次いで打ち出し、金融政策や産業政策と合わせて運用することにより、社会主義市場経済下のマクロコントロール・システムを健全化し、また国際金融危機のインパクトにも効果的に対応するとともに、長期にわたる持続可能な発展の土台を築き上げた。
税財制改革は絶えず深化し、公共財政体系はいっそう健全なものになった。財政の移転支出制度は次第に完全なものになり、県クラスの基本的財政力保障メカニズムはほぼ確立し、政府予算システムの枠組みもおおむね形成された。農業税は全面的に撤廃され、消費型付加価値税への転換にかかわる改革は広く実施され、内外企業に係る租税制度は全面的に統合され、消費税制度も引き続き完備されつつある。また、精製油の税・費用改革は円滑に進み、資源税改革のテスト作業もスタートし、地方税改革も着実に進展している。
財政管理は絶えず強化され、管理の水準も一段と高まった。法律による財政管理は踏み込んで進められ、政府収支の科目区分体系は絶えず健全化し、予算編成と執行管理は強化された。また、予算公開の活動は急ピッチで進展し、財政監督メカニズムは絶えず整備されており、財務会計制度はより健全なものになっている。このため、財政の機能と役割がよく発揮されているといえよう。以上のような成果があげられたのも、党中央、国務院が全局を統轄し、正しい指導を行ったたまものであり、各地区、各部門が緊密に協力し、地道に仕事に取り組んだたまものであり、さらに全国の各民族人民が団結奮闘し、ともに努力したたまものである。それと同時に、われわれは財政の運営と管理活動に今もなおいくつかの際立った問題が存在していることをはっきりと認識している。その問題とは主として、①一部の県、郷の末端財政は依然として多くの困難を抱えており、基本的な財政保障力をさらに強める必要があるということ。②財政力と所管部門の権限が釣り合った財政体制はまだ完備しておらず、地域間、都市・農村間の基本的公共サービスの均等化を推進する任務は極めて重い。③経済発展パターンの転換を促す財政・租税政策が未だに健全化されていないため、財政による所得分配調節の役割をさらに強める必要があるということ。④地方政府には見過ごすことのできない債務リスクが存在するということ。⑤土地使用権譲渡に係る収支の管理強化が急務であること。⑥財政管理が依然として手薄で、歳出予算の執行進度のバランスがとれておらず、資金運用の効率を向上させる必要があること、などである。われわれはこれらの諸問題を高度に重視し、引き続き効果的な措置を講じて解決するよう努めなければならない。