こうした成果を十分に肯定しつつも、われわれは、二〇一二年度のマクロコントロールが直面する状況も複雑で厳しいものになる、ということをはっきり認識している。国際的には、世界経済回復の不確実性・不安定性が高まり、景気下押しの圧力が明らかに増大し、欧州ソブリン債務危機が深刻さを増し、国際金融市場が激しく揺れ動き、保護貿易主義と保護投資主義がいっそう強まっている。さらに、国際的・地域的な緊張や紛争が跡を絶たず、世界のエネルギー資源の安定供給が大きな試練にさらされている。国内では、発展における不均衡・不調和・持続不可能の問題・矛盾が依然として際立っている。第一に、経済成長に押し下げ圧力が存在していることが挙げられる。外需の低迷と内需の鈍化を同時に迎える可能性がある。わが国では二〇一一年九月以来、輸出の伸び率が下落し続けているため、二〇一二年はより大きな困難に直面することになる。内需の伸びを制約する要素が引き続き増えているため、消費の伸びが安定しつつも鈍化する可能性があり、企業の投資能力と意欲がいくらか弱まっている。第二に、物価押し上げ圧力が依然としてかなり大きいことが挙げられる。労働力・土地・エネルギー資源といった要素価格の上昇が長期化する傾向を呈している一方、輸入型のインフレ要因も無視できず、一部農産物の逼迫した需給構造が変わることも考えられない。さらに、資源関連製品の価格調整もある程度物価総水準を押し上げることになると見込まれる。第三に、農業の安定した増産がかなり難しいことが挙げられる。農業の基盤がまだ不安定で、科学技術水準も低く、資源による制約も強まっており、農業による収益は相対的に低い水準にとどまっている。さらに、食糧は「八年連続の増産」を達成したものの、生産量がすでにかなりの規模に達しているという問題や、生産コストが高いなどの新しい課題に直面している。第四に、省エネ・排出削減活動を取り巻く状況が厳しいことが挙げられる。構造的な不合理さが顕著な問題となっており、旧式生産能力の廃棄を完了させるとともに、サービス業と戦略的新興産業の発展を支える市場や政策面の環境づくりを強化する必要がある。エネルギー消費量の伸びが比較的速い、省エネ・排出削減を図るための長期的で効果的なメカニズムがまだ整っていない、汚染物質の排出量が依然としてやや多いといった問題があるほか、環境汚染事件が多発する傾向を呈している。第五に、一部の企業がさらなる経営難に陥っていることが挙げられる。一部の業種の生産能力過剰の問題が顕在化し、企業の赤字が増大している。なかでも、小企業・零細企業の経営難がとくに目立っている。一方、財政・金融分野にリスクが潜在しており、不動産市場のコントロールが正念場を迎えているほか、所得分配における格差が依然として大きく、教育や医療衛生の改革・発展への取り組みも容易に進まず、加えて、安全生産や製品品質、土地収用・家屋立退きなどについて大衆が強い不満を抱いているという問題が存在し、社会の安定と調和が脅かされている。以上の問題を、われわれは重く受け止めて、その解決と対応に真摯に取り組んでいく。