テロの巨頭ビンラディンの米国による殺害は、国際的なテロとの戦いにおける重要な出来事、前向きな進展であり、米国のグローバル・テロ対策の段階的な勝利と言える。だがテロとの戦いは終息には程遠いし、ビンラディンの死もテロの終結を意味するものではない。テロ対策において重要なのは根本的対策と個々の対策を併せて行い、テロを生む土壌の除去に努めることであると、冷静に認識しなければならない。(文:傅小強・中国現代国際関係研究院テロ対策研究センター主任。「人民日報海外版」コラム「望海楼」より)
周知の通り、ビンラディンはアルカイダの精神的指導者であり、さらに国際テロの象徴でもある。ビンラディンの死によって確かにテロ勢力は指導者喪失の混乱に一時的に陥るだろう。だがテロを生む土壌を除去しないのなら、暴力によって暴力を制すこのようなやり方によるテロ対策の効果は長くは続かない。近年のビンラディンはアルカイダの精神的指導者に過ぎず、テロを直接指揮することは少なかった。ビンラディンの死によって、「叩けば叩くほどテロが起きる」悪循環から米国が抜け出せるわけではない。
アルカイダの生存に適した土壌は依然肥沃であることから、ビンラディン後のアルカイダ?ネットワークには3つの大きな発展の流れが生じることが予測できる。
第1に、パキスタンやアフガニスタンの村落がアルカイダにとって中心的な隠れ場所、発展の重要な根拠地であり続ける。この地域の貧困や立ち後れ、多くの過激派組織の存在が、アルカイダに広範な活動の余地を与える。アルカイダは一時的な権力の空白期を経て、ザワヒリらの新指導層が台頭し、米国および西側への対抗の旗を再び掲げる。
第2に、イエメン、ソマリア、北アフリカの動乱、貧困と部落社会が、アルカイダ系組織の急速な発展の温床となる。これらの地方は長年にわたり経済成長に後れをとり、社会は秩序を失い、人々は生活難に喘ぎ、極端な思想が蔓延している。西側諸国はこうした混乱を自国の利益のために座視し、あるいは介入、煽動してきた。このため反米・反西側のジハード(聖戦)系組織、アルカイダ系組織の発展は手をつけられない状態となり、国際テロ活動の新たな温床と成り果てている。「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)はイエメンの政治的、経済的、社会的苦境を十分に利用して急速に発展し、米国を著しく脅かす新たなテロ戦線となっている。ソマリア青年党は海賊と結託し、新たなテロの発祥地を切り開こうとしている。「イスラム・マグリブのアルカイダ」は北アフリカの動乱に介入し、欧米に対するテロの新たなネットワークを構築しようと図っている。