文=在日中国人学者 徐静波
菅内閣に対する不信任決議案の採決がとられた昨日の「茶番劇」の様子について、日本のマスコミは「鳩山うれし、菅つらし、小沢はホッとし」と見出しをつけている。不信任決議案は結局否決されたものの、菅政権退陣の時期および後継者の問題が日本の政界で重要議題になっている。
◆昔日の「鉄三角」、それぞれの思惑
鳩山由紀夫前首相に言わせると、旧民主党は彼が作った政党である。15年前、小沢一郎元を党首とする自由党と合併し、新たに民主党を発足させた際には、鳩山・菅・小沢の3人を、結束が固いという意味で「鉄三角」と表現されていた。
この度の不信任決議案に対し、小沢元民主党代表をトップに据える党内70人以上のグループが賛成票を投じている。鳩山前首相でさえも菅首相のやり方を批判しており、菅政権への反対勢力を支持する構えを表明している。このように、民主党の解体は目前に迫っており、これまで手塩にかけて育てた政党も崩れようとしている。それを望まない鳩山前首相は、菅首相辞任により議員らの怒りを鎮めることで民主党を救おうとしている。そして昨日、鳩山前首相は自分の目的だけは果たせたようだ。
菅直人首相からすると、辞任の意向を表明せざるを得なかったのだが、鳩山前首相と折り合うことで、退陣を迫られるといった屈辱や悲劇を回避することができたのである。また、残り少ない時間を使って、東日本大震災の再建や原発事故の処理に対する法案や計画を制定することが出来る。だが、衆議院が「内閣不信任案」を否決した時点で、菅首相の辞任はカウントダウンの段階に入っている。首相官邸に居られるのはあとどれくらいか?1カ月?2カ月?それとも半年?すでに自分が決められる事ではなくなっている。国会議員らが、全国民がみな首相の一挙一動に注視しているのだ。そう考えると、菅首相の憂鬱は今後も続くのだ。
だが小沢元代表からすると、小沢グループ70人をも引き連れ、造反の意思を表明したその目的は、菅政権を退陣させ、日本の国難を救う能力をもった政治体制を構築することにあった。小沢は以前から「破壊者」と異名を持つが、70歳に手が届こうとする年齢から考えると、自分の手で育て上げた政党を解散させ、新たな党を結成する気力もないだろう。そのため、内心ではやはり民主党をもう一度一致団結させたいと思っているはずである。今、菅首相が辞任の意向を示し、戦友であるはずの鳩山前首相が造反したことで、小沢元代表の党内人気は高まっている。結党当時の理念を民主党が取り戻し、党内での自分の地位を再度高めることが狙いだったのである。そのため、菅首相と対立する必要がなくなった今、一安心といったところだろう。
◆2つの難題