三、対外援助の方式
中国の対外援助は主に次の8種類の方式からなる。ワンセットになったプロジェクト、一般的な物資、技術協力、人的資源の開発・協力、対外援助医療チーム、緊急人道主義援助、対外援助ボランティアと債務減免がそれである。
ワンセットになったプロジェクト
ワンセットになったプロジェクトの援助は、中国が無償援助と無利子借款などの援助資金を提供し被援助国の生産や民用分野でのプロジェクトを建設することを指す。中国側はプロジェクトの考察、実地調査、設計と施工の全部あるいは一部のプロセスを担当し、全部あるいは一部の設備、建築材料を提供し、技術者を派遣し、施工、据え付けと生産テストの指導と組織を担当する。項目の竣工の後、被援助国に引き渡す。
ワンセットになったプロジェクトは中国の最も主要な対外援助方式である。1954年から、中国はワンセットになったプロジェクトの援助方式を利用してベトナム、朝鮮の両国のために、戦争によって破壊された鉄道、自動車道路、港、橋梁と都市交通などの施設を修復し、また一連の基礎工業の建設を支援し、両国の戦後再建と経済の発展に大きく貢献した。その後、ワンセットになったプロジェクトの建設規模と範囲は引き続き拡大し、対外援助の支出の中でずっとかなり大きな比率を占めてきた。現在、ワンセットになったプロジェクトの援助が対外援助の財政支出に占める比率は約40%に達している。
2009年末現在、中国は発展途上国を助けて現地の人びとの生産と生活と緊密な関係のある2000余ヵ所の各種のプロジェクトを建設し、それは工業、農業、文化教育、医療衛生、通信、電力、エネルギー、交通など多くの分野にわたるものである。
表1 完成された中国のワンセットになったプロジェクトの
業種別分布状況(2009年末現在)
業種 |
項目数 |
業種 |
項目数 |
農業類 |
215 |
工業類 |
635 |
農業・畜産業・漁業 |
168 |
軽工業 |
320 |
水利 |
47 |
紡績 |
74 |
公共施設類 |
670 |
無線電信電子 |
15 |
会議ビル |
85 |
機械工業 |
66 |
スポーツ施設 |
85 |
化学工業 |
48 |
劇場・映画館 |
12 |
木材加工 |
10 |
民用建築 |
143 |
建材加工 |
42 |
市政施設 |
37 |
冶金工業 |
22 |
井戸の掘削による水供給 |
72 |
炭鉱 |
7 |
科学教育・医療衛生 |
236 |
石油工業 |
19 |
経済インフラ類 |
390 |
地質鉱産物探査 |
12 |
交通輸送 |
201 |
その他 |
115 |
電力 |
97 |
|
|
ラジオ・電信 |
92 |
合計 |
2025 |
注:この表のデータには特恵借款項目は含まない。
一般的な物資
一般的な物資の援助は、中国は援助資金によるプロジェクトに対し、被援助国に必要な生産・生活物資、技術製品や項目別に必要な設備を提供し、また必要な附属技術サービスを担当することを指す。
中国の対外援助は最初は一般的な物資の提供から始まった。20世紀50、60年代、国内で物資が非常に逼迫していた状況の下で、広はんなアジア・アフリカ諸国の民族解放と民族経済の発展を支援するため、中国はアジア・アフリカ諸国に多くの生産・生活物資を提供してきた。単に援助物資を提供する以外に、中国はまたワンセットになったプロジェクトの建設に合わせて、各種の附属設備と物資も提供した。中国は終始国内で生産された質の最もよい製品を援助物資とし、提供した物資は機械設備、医療設備、検査測定設備、交通輸送手段、事務用品、食品、医薬品など多くの分野にわたるものである。これらの物資によって、被援助国の生産・生活で緊急に必要とするものが満たされ、そのうちの一部の設備、例えば民用航空機、機関車、コンテナ検査測定設備などは、被援助国の装備能力の向上と産業の発展を促すことにもなった。
技術協力
技術協力は、中国が専門家を派遣し、すでに完成されたワンセットになったプロジェクトの後続生産、運営や保全のために技術指導を提供し、現地で被援助国の管理者と技術者を育成することを指す。発展途上国の生産を発展させるための実験栽培、実験飼育、実験製作を助け、中国の農業と伝統的手工芸の技術を伝授してきた。また、発展途上国を助けて、特定項目の専門的考察、調査、企画、研究とコンサルティングなどをも行ってきた。
技術協力は中国が被援助国に自主的な発展能力を強化させる重要な協力方式である。技術協力が関わる分野は広く、工業生産と管理、農業栽培と養殖、編みもの、刺繍などの手工業の生産、文化教育、スポーツトレーニング、医療衛生、メタンガス施設、小型水力発電所などのクリーンエネルギーの開発、地質の全面的調査・探査、経済計画などを含む。技術協力の期限は一般的に1年間から2年間で、必要な場合、相手側の要請によって、延長することも可能であった。