中華人民共和国国務院報道弁公室
中国の対外援助
中華人民共和国国務院報道弁公室 2011年4月
2011年初版発行
ISBN 978-7-119-06930-2
Ⓒ2011 中国 北京 外文出版社
外文出版社出版
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目 次
前書き
中国は発展途上国である。なが年らい、中国は自らの発展に努めるとともに、終始経済的に困難なその他の発展途上国に力の及ぶ限りの援助を与え、それ相応の国際的義務を担うことを堅持してきた。
20世紀50年代に、新中国が成立してまもなく、中国は自らの経済がきわめて逼迫し、物資が非常に欠乏していた状況のもとで、対外経済・技術援助を提供し始め、さらに援助の範囲をちくじ拡大してきた。70年代末に改革開放を実施して以降、中国は経済が急速な発展をとげ、総合的国力が著しく向上したものの、依然として一人当たりのGDPは低く、貧困人口が多い発展途上国であった。それにもかかわらず、中国は力相応に事を運び、できるだけ対外援助を行い、被援助国が自主発展能力を高め、国民の生活を充実させ、改善し、経済の発展と社会の進歩を促すことを支援してきた。中国は、対外援助によって広はんな発展途上国との友好関係や経済・貿易協力を発展させ、強固にし、南南協力を促し、人類社会の共同発展のために積極的な貢献をしてきた。 中国の対外援助は、平等互恵を堅持し、実効を重んじ、時代とともに進み、いかなる政治的条件もつけず、自らの特色のあるモデルを形成してきた。
一、対外援助政策
対外援助のプロセス
中国の対外援助は周辺の友好国への支援から始まった。1950年に中国は朝鮮やベトナムに物資を援助し始め、対外援助の序幕を開いた。1955年にバンドンでアジア・アフリカ会議が開催された後、対外関係の発展に伴い、中国は対外援助の範囲を社会主義国からその他の発展途上国へと拡大した。1956年に中国はアフリカの国々に援助を提供し始めた。1964年に中国政府は平等互恵、付帯条件なしを柱とする対外経済技術援助に関する8原則を発表し、対外援助の基本的方針を確立した。1971年10月に広はんな発展途上国の支持のもとで、中国は国連における合法的地位を回復した。中国はさらに多くの発展途上国と経済・技術協力関係を確立し、またタンザニアとザンビア両国間の鉄道など一連の重要なインフラプロジェクトの建設を援助した。この時期、中国は自らの困難を克服し、他の発展途上国が民族の独立を勝ち取り、民族の経済を発展させることを最大限支援し、新中国が広はんな発展途上国と長期にわたる友好協力関係を構築するために確固たる基盤を築いた。
1978年の改革開放の後、中国と他の発展途上国との経済協力が過去の単なる援助からさまざまな形での互恵協力へと発展した。中国は国情に応じて対外援助の規模や枠組み、構造、分野を適切に調整し、後発発展途上国に対する援助をさらに強化し、対外援助プロジェクトの経済効果と長期効果をいっそう重視し、より弾力性のある援助方法をとることになった。建設済みの生産性のある援助プロジェクトの成果を強固にするために、中国は一部の被援助国と代理管理・経営、賃貸経営、合弁経営などさまざまな形での技術や管理の協力を繰り広げた。建設済みの生産性のある援助プロジェクトの一部は、以上の協力モデルによって、企業の経営管理を改善し生産レベルを向上させるうえで在来の技術協力より著しい効果を上げた。調整や強化を経て、中国の対外援助は中国の国情や被援助国の実際のニーズにいっそう相応しい発展の道に歩みだすことになった。
20世紀90年代、中国は計画経済体制から社会主義市場経済体制へ転換する過程で、対外援助に対して一連の改革を行い、援助金の出所と援助手段の多様化の促進に重点を置いた。1993年、中国政府は発展途上国が償還した一部の無利子貸付資金を利用して対外援助合弁協力プロジェクト基金を設置した。この基金は主に生産や経営分野における中国の中小企業と被援助国の企業との合弁協力に用いられた。1995年に中国は中国輸出入銀行を通じて発展途上国に政府の援助としての中長期の低金利特恵貸付を提供し始め、援助金の出所を効果的に拡大することになった。それと同時に、中国は被援助国の自らの発展能力の向上をいっそう重視し、対外援助としての技術トレーニングの規模をたえず拡大し、被援助国の人たちの中国での技術トレーニングは、徐々に人的資源開発における協力の重要な内容となっている。2000年に設立された中国・アフリカ協力フォーラムは、中国とアフリカの友好国が新しい情勢のもとで集団的対話を行うための重要な受け皿と実務的協力を行うための効果的仕組みとなっている。この段階の改革により、中国の対外援助はいっそう発展をとげ、より明らかな効果を見せている。
新世紀とくに2004年以来、経済が持続的な高成長を保ち、総合的国力がたえず向上したことを背景に、中国の対外援助資金は急増し、2004年から2009年までの年平均増加率は29.4%に達した。中国は二国間協議を通して援助プロジェクトを決めるという在来の方法以外に、国際と地域の面から被援助国との集団協議を強化している。国連発展資金調達に関する首脳会議、国連ミレニアム開発目標に関するハイレベル会合、中国・アフリカ協力フォーラム、上海協力機構、中国―東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、中国―カリブ経済貿易協力フォーラム、中国―太平洋島嶼国経済発展協力フォーラム、中国―ポルトガル語圏諸国経済貿易協力フォーラムなど地域協力メカニズムに関する会議では、中国政府は対外援助についての包括的政策・措置をたびたび明らかにし、農業やインフラ、教育、医療衛生、人的資源開発での協力、クリーンエネルギーなどの分野への援助を拡大している。2010年8月に中国政府は全国対外援助活動会議を開催し、対外援助活動を総括し、新しい情勢のもとで対外援助活動をいっそう強化し改善させるための中核任務を明確にした。中国の対外援助は新たな発展の段階に入ることになった。
対外援助政策
中国の対外援助政策は鮮明な時代の特色をそなえ、自らの国情と被援助国の発展のニーズに合わせたものとなっている。20世紀60年代に中国が提起した対外援助8原則は、最初から中国の対外援助の基本的方針であり、さらに実践の中で充実され、整備され、発展してきた。中国は世界最大の発展途上国であり、人口が多く、経済的基盤が弱く、経済の発展がアンバランスである。発展は依然として中国が直面している長期的かつ非常に困難な任務であり、これは中国の対外援助が南南協力の範囲に属し、発展途上国間の相互支援であることを決定づけている。
中国の対外援助政策の基本的内容は次の通りである。
――被援助国の自主発展能力の向上をあくまでも支援する。実践が証明しているように、一国の発展は主に自らの力に頼るものである。中国は対外援助を行うと同時に、被援助国の人材育成と技術トレーニングに尽力し、被援助国がインフラを整備し、自国の資源を開発し利用し、発展の基盤を打ち固め、自力で、独自の発展の道を歩むことを助けている。
――いかなる政治条件も付けないことを堅持する。中国は平和共存5原則を守り、各被援助国が発展の道とパターンを自主的に選ぶ権利を尊重し、各国が自国の国情に合った発展の道を見つけ出せることを信じ、決して援助を他国の内政に干渉し政治的特権をはかる手段にしない。
――平等互恵、共同発展を堅持する。中国は終始対外援助を発展途上国間の相互支援と見なし、実効を重んじ、相手の利益を配慮し、他の発展途上国との経済・技術協力によって友好関係と互恵・ウィンウィンを促すことに力を入れている。
――力相応の援助を提供し、援助に尽力することを堅持する。援助の規模や手段の面で、中国は自国の国情に応じてできる限りの援助を行っている。比較優位を十分に生かし、被援助国の実際のニーズに最大限応えることを重視している。
――時代とともに進み、改革や革新を堅持している。中国の対外援助は内外の情勢の発展や変化に順応し、経験を総括し、対外援助の手段を革新し、管理メカニズムを適時に調整し改革し、対外援助活動のレベルをたえず向上させることを重視している。
二、対外援助資金
中国の対外援助資金は、主に無償援助、無利子貸付、特恵貸付という3つのタイプに分けられている。そのうち、無償援助と無利子貸付資金は国の財政から支出され、特恵貸付は中国政府が中国輸出入銀行を指定して対外的に提供するものである。2009年末までに、中国の対外援助金額は合わせて2562億9000万元に達し、中でも無償援助が1062億元、無利子貸付が765億4000万元、特恵貸付が735億5000万元となっている。
対外援助支出は国の財政支出の一部である。財政部は予算・決算制度によって対外援助の予算資金を統一的に管理している。商務部と国務院のその他の対外援助管理関係部門は、職責に基づいて各自の部門の対外援助資金を具体的に管理している。各部門は対外援助の任務に基づき、力相応に対外援助プロジェクトの年度支出予算を編成している。支出予算は、財政部の審査を経てまた国務院と全国人民代表大会の許可を得た後実施されている。各部門は対外援助プロジェクト資金に対して予算管理を行っている。財政部と会計検査署は国の関連法律や法規、財務規則制度に基づいて、主管部門の対外援助支出予算の実行状況を監督し検査している。
無償援助
無償援助は主に被援助国の病院や学校、低コスト住宅の建設、井戸掘削による水道プロジェクトなど中小型社会福祉プロジェクトに用いられている。そのほか、人的資源開発における協力、技術協力、物資援助、緊急人道援助などの分野にも用いられている。
無利子貸付
無利子貸付は主に被援助国の社会公共施設の整備と国民生活関連のプロジェクトに使われている。その期限は一般に20年とされ、中でも使用期間が5年、猶予期間が5年、償還期間が10年となっている。現在、無利子貸付は主として経済的に余裕のある発展途上国に向けて行われている。
特恵貸付
特恵貸付は主に被援助国の経済的利益や社会的利益のある生産プロジェクトの建設、大中型インフラ整備、もしくはプラント設備、機械電子製品、技術サービス、その他の物資の提供に用いられている。特恵貸付の元金は中国輸出入銀行が市場を通して調達し、貸付の金利は中国人民銀行の公布した基準金利より低いものであり、そこから生じる利子の差額は国の財政によって補填されている。現在、中国による特恵貸付の年利子率は一般は2%~3%、期限は普通15年~20年(5~7年の猶予期間が含まれる)とされる。2009年末現在、中国は計76の国に特恵貸付を提供し、プロジェクト325項目を支援し、そのうち142項目は建設済みである。中国による特恵貸付の61%は発展途上国の交通や通信、電力などのインフラ整備に用いられ、8.9%は石油や鉱産物などのエネルギーや資源の開発の支援に用いられている。
図1 中国の特恵貸付の業種別分布(2009年末現在)
三、対外援助の方式
中国の対外援助は主に次の8種類の方式からなる。ワンセットになったプロジェクト、一般的な物資、技術協力、人的資源の開発・協力、対外援助医療チーム、緊急人道主義援助、対外援助ボランティアと債務減免がそれである。
ワンセットになったプロジェクト
ワンセットになったプロジェクトの援助は、中国が無償援助と無利子借款などの援助資金を提供し被援助国の生産や民用分野でのプロジェクトを建設することを指す。中国側はプロジェクトの考察、実地調査、設計と施工の全部あるいは一部のプロセスを担当し、全部あるいは一部の設備、建築材料を提供し、技術者を派遣し、施工、据え付けと生産テストの指導と組織を担当する。項目の竣工の後、被援助国に引き渡す。
ワンセットになったプロジェクトは中国の最も主要な対外援助方式である。1954年から、中国はワンセットになったプロジェクトの援助方式を利用してベトナム、朝鮮の両国のために、戦争によって破壊された鉄道、自動車道路、港、橋梁と都市交通などの施設を修復し、また一連の基礎工業の建設を支援し、両国の戦後再建と経済の発展に大きく貢献した。その後、ワンセットになったプロジェクトの建設規模と範囲は引き続き拡大し、対外援助の支出の中でずっとかなり大きな比率を占めてきた。現在、ワンセットになったプロジェクトの援助が対外援助の財政支出に占める比率は約40%に達している。
2009年末現在、中国は発展途上国を助けて現地の人びとの生産と生活と緊密な関係のある2000余ヵ所の各種のプロジェクトを建設し、それは工業、農業、文化教育、医療衛生、通信、電力、エネルギー、交通など多くの分野にわたるものである。
表1 完成された中国のワンセットになったプロジェクトの
業種別分布状況(2009年末現在)
業種 | 項目数 | 業種 | 項目数 |
農業類 | 215 | 工業類 | 635 |
農業・畜産業・漁業 | 168 | 軽工業 | 320 |
水利 | 47 | 紡績 | 74 |
公共施設類 | 670 | 無線電信電子 | 15 |
会議ビル | 85 | 機械工業 | 66 |
スポーツ施設 | 85 | 化学工業 | 48 |
劇場・映画館 | 12 | 木材加工 | 10 |
民用建築 | 143 | 建材加工 | 42 |
市政施設 | 37 | 冶金工業 | 22 |
井戸の掘削による水供給 | 72 | 炭鉱 | 7 |
科学教育・医療衛生 | 236 | 石油工業 | 19 |
経済インフラ類 | 390 | 地質鉱産物探査 | 12 |
交通輸送 | 201 | その他 | 115 |
電力 | 97 |
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|
ラジオ・電信 | 92 | 合計 | 2025 |
注:この表のデータには特恵借款項目は含まない。
一般的な物資
一般的な物資の援助は、中国は援助資金によるプロジェクトに対し、被援助国に必要な生産・生活物資、技術製品や項目別に必要な設備を提供し、また必要な附属技術サービスを担当することを指す。
中国の対外援助は最初は一般的な物資の提供から始まった。20世紀50、60年代、国内で物資が非常に逼迫していた状況の下で、広はんなアジア・アフリカ諸国の民族解放と民族経済の発展を支援するため、中国はアジア・アフリカ諸国に多くの生産・生活物資を提供してきた。単に援助物資を提供する以外に、中国はまたワンセットになったプロジェクトの建設に合わせて、各種の附属設備と物資も提供した。中国は終始国内で生産された質の最もよい製品を援助物資とし、提供した物資は機械設備、医療設備、検査測定設備、交通輸送手段、事務用品、食品、医薬品など多くの分野にわたるものである。これらの物資によって、被援助国の生産・生活で緊急に必要とするものが満たされ、そのうちの一部の設備、例えば民用航空機、機関車、コンテナ検査測定設備などは、被援助国の装備能力の向上と産業の発展を促すことにもなった。
技術協力
技術協力は、中国が専門家を派遣し、すでに完成されたワンセットになったプロジェクトの後続生産、運営や保全のために技術指導を提供し、現地で被援助国の管理者と技術者を育成することを指す。発展途上国の生産を発展させるための実験栽培、実験飼育、実験製作を助け、中国の農業と伝統的手工芸の技術を伝授してきた。また、発展途上国を助けて、特定項目の専門的考察、調査、企画、研究とコンサルティングなどをも行ってきた。
技術協力は中国が被援助国に自主的な発展能力を強化させる重要な協力方式である。技術協力が関わる分野は広く、工業生産と管理、農業栽培と養殖、編みもの、刺繍などの手工業の生産、文化教育、スポーツトレーニング、医療衛生、メタンガス施設、小型水力発電所などのクリーンエネルギーの開発、地質の全面的調査・探査、経済計画などを含む。技術協力の期限は一般的に1年間から2年間で、必要な場合、相手側の要請によって、延長することも可能であった。
人的資源の開発・協力
人的資源の開発・協力は、中国が多国間や二国間のルートを通じて発展途上国にさまざまな形の政府公務員の研修、学歴・学位取得のための教育、専門技術養成およびその他の人員の交流項目を行うことを指す。
中国は1953年から人的資源の開発・協力項目を実施し始めた。20世紀50年代から70年代までに、中国は朝鮮、ベトナム、アルバニア、キューバ、エジプトなどの国から多くの実習生の中国留学を引き受け、それは農林、水利、軽工業、紡績、交通、医療衛生など20余の業種にわたるものであった。1981年から、中国は国連開発計画(UNDP)と協力して、発展途上国のために中国で多くの分野にわたる実用技術養成クラスを開設した。1998年から、中国政府は被援助国の公務員研修クラスをスタートさせ、養成した部門、分野と規模は急速に拡大している。2009年末現在、中国は発展途上国のために各種養成クラス4000余を開設し、養成された人員は延べ12万人に達し、その中には実習生、管理者、技術者および公務員が含まれる。その内容は経済、外交、農業、医療衛生、環境保全など20余りの分野にわたる。現在、毎年中国でのトレーニングを受ける発展途上国の人員は約1万人に達する。そのほかに、中国はまた技術協力などの方式を通じて被援助国で数多くの管理者、技術者を育成している。
対外援助医療チーム
対外援助医療チームは、中国が被援助国に医療関係者グループを派遣し、また一部の医療設備と医薬品を無償で提供し、被援助国で指定地域や巡回での医療サービスを行ってきた。
1963年、中国はアルジェリアに最初の医療チームを派遣した。現在までに、中国はすでにアジア、アフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、カリブ諸国とオセアニアの69の国に対外援助医療チームを派遣している。対外援助医療チームは普通は被援助国の医師や医薬品が不足している後れた地域で活動し、環境は非常に厳しかった。対外援助医療チームはよく見かける病気、多発する病気の多くの患者を治療した。またハリ灸、マッサージおよび中医学と西洋医学を結合した診療方法で多くの難病を診療し、危とく状態にあった多くの病人の命を救った。対外援助医療チームはまた現地の医療関係者に医療技術を伝授し、現地の医療衛生レベルの向上を促進した。対外援助医療チームのメンバーは熟練した技術、医師としての良好なマナー、高度の責任感と使命感で、被援助国の人びとへのサービスに努め、被援助国の政府と国民から尊重され、高く評価された。2009年末現在、中国は累計して2万1000余人の対外援助医療要員を派遣し、中国の医師の診療を受けた被援助国の患者は延べ2億6000万人に達した。2009年、60の対外援助医療チームの1324人の医療要員がそれぞれ57の発展途上国の130の医療機構で医療サービスを提供した。
緊急人道主義援助
緊急人道主義援助は、関係国と地域がさまざまなひどい自然災害や人道主義の災禍に見舞われた状況の下で、中国がすすんで、あるいは被災国の要請に応じて緊急救援物資、外貨現金を提供し、あるいは救援人員を派遣し、被災地の人たちの生命財産の損失を減らし、被災国の人たちを助けて災害によってもたらされた困難な局面に対応したことを指す。
なが年らい、中国は対外緊急救援行動に積極的に参与し、また国際緊急人道主義救援事業の中でますます重要な役割を発揮している。救援活動をより急速かつ効果的なものにするため、中国政府は2004年9月に対外人道主義緊急援助応急メカニズムを正式に確立した。2004年12月にインド洋で大津波が発生した際、中国は対外援助の歴史において規模が最も大きな緊急救援行動を行い、被災国に計7億元以上の各種援助を提供した。これまでの5年間に、中国政府は累計して緊急援助約200回を展開し、主に次のものが含まれる。例えば東南アジア諸国に鳥インフルエンザの予防と治療のための緊急技術援助を提供した。ギニアビサウのイナゴとコレラによる被害、エクアドルのデング熱、メキシコの新型インフルエンザ(H1N1)、イラン、パキスタン、ハイチ、チリで発生した地震、マダガスカルのサイクロン、ミャンマー、キューバで発生した熱帯のあらし、パキスタンの洪水による災害のために物資や外貨現金の緊急援助を提供した。朝鮮、バングラデシュ、ネパール、アフガニスタン、ブルンジ、レソト、ジンバブエ、モザンビークなどの国に緊急食糧援助を提供した。
対外援助ボランティア
対外援助ボランティアは、中国がその他の発展途上国にボランティアを選抜し派遣し、教育、医療衛生およびその他の社会発展の分野で現地の人びとにサービスを提供することを指す。現在、中国によって派遣されたボランティアは主に対外援助青年ボランティアと中国語教師ボランティアからなる。
2002年5月、中国は初めて5人の青年ボランティアをラオスに派遣し、教育と医療衛生分野で半年のボランティアサービスを展開した。2009年末現在、中国はタイ、エチオピア、ラオス、ミャンマー、セイシェル、リベリア、ガイアナなど19の発展途上国に計405人の対外援助青年ボランティアを派遣し、サービス範囲は中国語教学、中医学による治療、農業科学技術の普及、スポーツトレーニング、コンピュータートレーニング、国際救援などの分野にわたるものであった。そのうち、エチオピア、ガイアナなどの多くの国に継続派遣を行った。2003年から、中国は海外に中国語教師ボランティアの派遣を始めた。2009年末現在、世界の70余の国に中国語教師ボランティア延べ7590人を派遣した。
債務減免
債務減免は、中国が一部の発展途上国の期限の来た政府債務を免除することを指す。被援助国の対中国政府債務に対して、中国政府は返済の圧力をかけることはいままでなかった。無利子貸付の期日が来た時、被援助国が返済の困難に直面した場合、中国政府は従来から弾力的な処理方法をとり、二国間の話し合いを通じて返済の期限を伸ばしてきた。経済が困難な国の債務負担をさらに減らすために、中国政府は2000年の中国・アフリカ協力フォーラムの第1回閣僚級会議、2005年の国連発展資金調達に関する首脳会議、2006年の中国・アフリカ協力フォーラム北京サミット、2008年の国連のミレニアム発展目標に関するハイレベル会合、2009年の中国・アフリカ協力フォーラム第4回閣僚級会議と2010年の国連ミレニアム発展目標に関するハイレベル会合で、中国と外交関係のある重債務貧困国と後発発展途上国に対し、期限の来た無利子貸付の債務を前後して6回も免除した。2009年末現在、中国はアフリカ、アジア、ラテンアメリカ、カリブ諸国とオセアニアの50カ国との間で債務免除議定書に調印し、期限の来た債務は計380口で、金額にして255億8000万元を免除した。
表2 中国政府の被援助国の債務免除に関する統計
(2009年末現在)
地区 | 国家数 | 債務免除の件数 | 債務免除金額 (億元) |
アフリカ | 35 | 312 | 189.6 |
アジア | 10 | 41 | 59.9 |
ラテンアメリカとカリブ諸国 | 2 | 14 | 4.0 |
オセアニア | 3 | 13 | 2.3 |
合計 | 50 | 380 | 255.8 |
四、対外援助の分布状況
中国の対外援助の主な対象となるのは、所得の低い発展途上国である。援助分野の分布において、中国が重点的に注目しているのは被援助国の民生と経済発展であり、援助がその地元の貧困層により多くのメリットをもたらすよう努めている。
分布地域
中国の対外援助地域は比較的バランスよく分布している。被援助国は、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ諸国、オセアニアと東ヨーロッパなどの発展途上国が大部分を占める。中国は、後発発展途上国や所得の低い国に対する支援のウェートを一貫して3分の2前後に保っている。2009年末現在、中国は累計161カ国および30余りの国際組織と地域組織への援助を行い、中でも中国から定期的に援助を受けている国は123カ国に達する。その内訳は、アジア地域30カ国、アフリカ地域51カ国、ラテンアメリカおよびカリブ地域18カ国、オセアニア地域12カ国、東ヨーロッパ地域12カ国である。アジアとアフリカは貧困人口が最も多い地域で、中国からの援助が80%前後を占めている。
図2 2009年の中国の対外援助資金の地域別分布状況
図3 2009年に中国の対外援助を受けている国の所得の状況
主要分野
中国の対外援助項目は主に、農業、工業、経済インフラ、公共施設、教育、医療衛生などの分野にわたっており、被援助国が工・農業の生産能力を高めるための支援に重点を置き、経済と社会発展の基礎を増強し、基礎教育や医療状況を改善している。近年、気候変動への対応が中国の対外援助における新しい分野になっている。
農業
中国は、発展途上国の農業と農村の発展を促進し、貧困の軽減を対外援助の最優先項目としている。農業面の援助内容は次の通りである。①農場、農業技術モデルセンター、農業技術実験ステーションおよびその技術を普及させるための拠点を建設すること②農地の水利プロジェクトの建設③農機具、農産物の加工設備と農業と関連のある物資の提供④農業技術者とベテランの農業専門家を派遣し、農業生産技術の伝授と農業発展のための指導を行っていること⑤被援助国のために農業人材を育成すること、などである。中国が援助する農業プロジェクトは、被援助国の農業生産の発展を促進し、食糧や経済作物の生産量を増やし、軽工業を発展させるために原料を提供している。中国が派遣した農業専門家は、ギニアビサウのために11ヵ所の水稲生産モデルスポットを建設し、水稲を試験的に作付する面積は2000ヘクタールに達し、530トンの良種を育種した。そこで、栽培面積を3530ヘクタール拡大し、多くの品種の生産量が3倍以上増えた。2008年、中国側の農業専門家が、ギニアビサウ農業省の科学技術進歩最優秀賞を受賞した。マダガスカルの交雑種水稲の育種モデルセンターで34種の中国の交雑種水稲が試験的に栽培され、平均生産量は1ヘクタールにつき8トン以上で、マダガスカルの水稲の平均生産量の2倍から3倍にあたる。20世紀60年代、中国の支援でマリのサトウキビの試験栽培が成功したうえ、同国ではサトウキビ農場と製糖工場を援助して建設し、自国での食用砂糖生産の歴史の幕開けとなった。現在、中国の支援によって建てられた2ヵ所のサトウキビ農場と2ヵ所の製糖工場からなる、マリ製糖コンビナートは、マリの国民経済の中で重要な役割を果たしている。中国の援助を得て、20世紀80年代に、チュニジアの麦熱爾徳(Mashta al Anad)―崩角(Ben Jarw)間の用水路が建設され、チュニジア農業において西側の水を東側に引いてくる灌漑を実現させ、崩角(Ben Jarw)地域の農業発展のために確固たる基礎を築いた。
中国は、農業と食糧生産分野への援助を拡大し続けている。近年来、食糧安全問題は、国際社会で大いに注目されるグローバルな問題となっている。そのため、中国は一連の対外援助措置をとった。例えば、2010年国連ミレニアム開発目標に関するハイレベル会合で、中国政府は以下のことを承諾した。①向こう5年間に発展途上国のために30ヵ所の農業技術モデルセンターを建設する②農業専門家と技術者を3000人派遣する③発展途上国のために、中国での5000人の農業トレーニングを実施する。 2009年末までに、中国は発展途上国のために、計221の農業支援プロジェクトを実施し、その内訳は、農場35ヵ所、農業技術実験ステーションおよび普及施設47ヵ所の建設、牧畜業プロジェクト11項目、漁業プロジェクト15項目、農地水利プロジェクト47項目、その他の農業プロジェクト66項目などが挙げられる。そのほかに、中国から数多くの農業機械・設備など農業用物資が提供された。
工業
工業への援助は中国の対外援助の中でも早い時期から重要な地位を占める項目であった。20世紀50年代から70年代にかけて、中国は、アジアやアフリカ地域の独立したばかりの国々を支援し、工業プロジェクトを実施し、被援助国の工業発展の基礎を築いた。多くのプロジェクトは被援助国の自国の工業における空白を埋めた。工業援助は70年代に発展が加速し、かつては、中国のワンセットになった援助プロジェクトの中でも重要な内容の1つとされた。80年代の中・後期からは、多くの発展途上国において企業の私有化が加速し、中国のこの分野における援助はちくじ減少した。中国が支援した工業プロジェクトは、被援助国の生産と経済の発展を促進し、雇用と税収を増やし、市場の繁栄に積極的な役割を果たした。2009年末までに、中国は発展途上国に対し688項目の工業生産関連のプロジェクトを援助し、業種としては、軽工業、紡績、機械、化学工業、冶金、電子、建材、エネルギーなど多くの分野にわたる。シリアのハマー紡績工場、ルワンダのセメント工場、ペルーのセメント工場、ミャンマーの農業機械工場、コンゴ共和国のセメント工場などの大型プロジェクトは、収益を保ち続けている。また、数多くの現地職員を採用し、良好な経済利益と社会効果が見られる。
経済インフラ
経済インフラの建設は、一貫して中国の対外援助の重要な内容となっている。援助資金には限りがあるが、中国は熟練した技術と低い人件費コストという優位を十分に発揮し、その他の発展途上国のために交通、通信、電力などのインフラ施設プロジェクトを実施した。2009年末までに、中国は発展途上国のために、計442ヵ所の経済インフラ施設プロジェクトを支援した。イエメンのサナアとホデイダを結ぶハイウェイ、パキスタンのカラコルム・ハイウェイ、グワダル港、タンザニアとザンビアを結ぶ鉄道、ソマリアのべレトウェインとブラオの間のハイウェイ、マルタの乾ドック、カメルーンのラグド水力発電所、モーリタニアの友誼港、ボツワナ鉄道の改造、バングラデシュの橋梁6基、中国・昆明とタイ・バンコクを結ぶ高速道路のラオス区間、ミャンマーのメコン川流域情報ハイウェイ(GMS情報ハイウェイ)、タジキスタンのシャル―シャルトンネル、カンボジアの7号幹線道路、エチオピアのゴテラ立体橋などのプロジェクトが挙げられ、被援助国の生活及び生産環境を改善し、被援助国の経済と社会の発展のために、より良い条件をつくり出した。
公共施設
公共施設は、中国の対外援助の中でも特色のある分野である。中国が支援している公共施設プロジェクトは主に、都市施設、民用建築、井戸掘削給水プロジェクト、会議ビル、スポーツ施設、カルチャー施設、科学・教育・医療衛生施設などが含まれる。2009年末までに、中国は発展途上国のために、計687の各種公共施設プロジェクトの支援を実施した。スリランカのバンダラナイケ記念国際会議ビル、スーダンの友誼会館、ガーナのナショナル劇場、エジプトのカイロ国際会議センター、コモロのラジオ・テレビセンター、ミャンマーの国際会議センター、ケニアの国際スポーツセンター、フィジーの多目的体育館、タンザニアのナショナルスタジアムなどの公共施設とスポーツ施設などが挙げられる。これらの建築物は、現地社会の政治や文化活動のセンターであり、都市のランドマークでもある。モーリタニアの首都圏給水プロジェクト、カンボジアの井戸プロジェクト、タンザニアのチャリンゼ給水プロジェクト、ニジェールのザンデール給水プロジェクト、アンゴラの低コスト住宅プロジェクト、スリナムの低コスト住宅プロジェクトなどの社会公共福祉施設は、地元の貧困層の生活条件の改善に積極的に貢献した。
教育
中国政府は、発展途上国の教育分野への支援を一貫して重視してきた。中国の教育支援の内容は、主に学校の建設、教学設備と資料の提供、教師の派遣、発展途上国の教師や実習生の中国でのトレーニング、発展途上国からの留学生への政府奨学金の給付などを含む。
20世紀50年代から、中国は発展途上国の学生が中国に来て学習することへの支援を始めており、アジアやアフリカ諸国で一般学校、技術学校の建設や教学のために必要な器械や実験室の設備を提供した。60年代には、発展途上国への教師の派遣を行った。70年代、80年代には、被援助国からの要請に応じて、留学生を受け入れるという形をとり、タンザニアとザンビアを結ぶ鉄道、モーリタニア友誼港、タンザニア炭鉱、ガイアナ紡績工場などのワンセットになったプロジェクトを援助するために、中・上級の技術要員と管理要員の専門的なトレーニングを行った。近年来、中国の発展途上国の教育に対する援助は拡大し、農村学校約100ヵ所の建設を援助し、政府奨学金給付対象者と中国での教師のトレーニング対象者を大幅に増やした。また、被援助国のレベルのまだ低い学科の発展のために教師の派遣を増やし、発展途上国の職業技術教育や遠隔教育などの面での協力を強化することにしている。中国は、教育分野での援助によって、被援助国の教育事業の発展を促進し、被援助国の教育、管理、科学技術などの分野の人材を数多く育成し、被援助国の経済や社会発展のために教育面からのサポートを提供している。
2009年末現在、中国は発展途上国のために130ヵ所以上の学校の建設を援助した。累計119カ国の発展途上国の留学生に経済的な支援を行い、合わせて70627名の留学生が中国で各種の専門的な学習をしている。中でも、2009年には11185名の留学生に奨学金を提供し、対外援助のために1万名近くの教師を派遣し、また、被援助国の校長と教師1万余人に対してトレーニングを実施した。
医療衛生
医療衛生は、中国の対外援助の中でも重要な分野である。主要な援助内容としては、病院、医療衛生センター、マラリア予防治療センターの建設、医療チームの派遣、医療要員のトレーニング、医薬品や医療物資の提供などが挙げられる。2009年末までに、中国は、100ヵ所以上の病院と医療サービスセンターの建設を支援し、大量の医療設備と医薬品を提供し、現在30以上の病院を建設中である。
中国の援助によって建設されたのは、イエメンのタイズ病院、中国・アフリカ友誼病院、ギニアビサウのカンシュンゴ病院、ジンバブエのチノイ病院、チャド自由病院、ラオスのルアンプラバン病院など、地元の人たちが病院で診療を受ける際の困難を解決するために積極的な貢献をした。近年来、中国は発展途上国、特にアフリカ諸国でエイズやマラリアなどの伝染病やその他の疾病の予防または治療を強化しており、中国伝統医薬の研究や応用などの面での交流と協力を行い、また発展途上国のために数多くの医療要員を育成した。ここ3年間に、中国はアフリカ諸国に30ヵ所のマラリア予防治療センターを設立し、1億9000万元に相当するアーテミシニンなど抗マラリア医薬品を提供した。中国は医療分野の援助において、被援助国の医療衛生事業の発展、医療衛生条件の整備、医療技術レベルの向上に積極的に貢献している。
クリーンエネルギーと気候変動への対応
メタンガスと小型水力発電所などクリーンエネルギーの利用は、中国が早い時期から一定の優位を保っている援助分野である。対外援助の初期に、中国は、アジアやアフリカの発展途上国が、地元の農業生産と人びとの生活のために電力を提供するため、地元の水力資源を利用して中・小型水力発電所および送変電プロジェクトの実施を支援していた。20世紀80年代、中国は国連の関連機構に協力して、多くの発展途上国にメタンガス技術を伝授した。また同時に中国は、二国間援助を通じてガイアナやウガンダなどの国にメタンガス技術を伝授し、比較的良い効果を上げ、被援助国の燃料輸入への依存を軽減した。
中国の気候変動に対応する援助もだんだんと増えてきている。近年来、世界規模の気候変動問題が日ごとに深刻になり、中国はその援助範囲を拡大している。中国とチュニジア、ギニア、バヌアツ、キューバなどの国とメタンガス技術の協力を行っている。また、カメルーン、ブルンジ、ギニアなどの国を支援するため、水力発電所を建設した。モンゴル、レバノン、モロッコ、パプアニューギニアなどの国とは、太陽光エネルギーと風力発電分野において協力を行っている。その他にも、中国は発展途上国のためにクリーンエネルギーと気候変動への対応に関連するトレーニングを行い、2000年から2009年までに、合わせて50期のトレーニングクラスを立ち上げた。ここでは、メタンガス、太陽光エネルギー、小型水力発電所など再生可能エネルギーの開発・利用、林業の管理、砂漠化対策などのトレーニングを行い、発展途上国から中国に来た学習者1400名以上が参加した。
五、対外援助に関する管理
中国の対外援助の政策決定権は、中央政府にある。1950年以来、対外関係と対外援助活動の発展に伴い、中国政府は対外援助における各レベルの管理機構を設置し、それを健全なものにしており、プロジェクトの管理能力を強化し続けている。
商務部は国務院から授権された対外援助を主管する部門であり、対外援助政策、規則、全体計画と年度計画の起草と制定を請け負っており、各種援助プロジェクトならびにプロジェクトの実施、運営における全プロセスの管理を行っている。国際経済協力事務局、国際経済技術交流センター、国際ビジネス公務員研修学院は商務部に所属しており、ワンセットになった援助プロジェクトの管理と技術協力、物資やトレーニング項目の具体的な実施をそれぞれ分担する形で委託されている。中国輸出入銀行は特恵貸付の評価および貸付金の交付、回収などの管理を行い、中国の外国駐在大使館(領事館)が駐在国に対する援助プロジェクトの協調と管理を行っている。地方商務管理機構は商務部に協力し、その管轄地区の対外援助に関する具体的な事務活動を行う責任を負っている。
対外援助活動を展開する際、中国政府の各関連部門は、緊密な連携体制と協力関係を保っている。商務部は、国別の援助方案と対外援助資金計画を制定する際に、外交部、財政部、中国輸出入銀行と情報交換をきちんと行い、上記部門の意見を広く求めている。国務院のその他の部門は、専門的な対外援助活動の管理に参与するかまたはその責任を負っている。各部門間の更なる協調関係を強化するために、2008年に商務部は、外交部、財政部などの関連部門や関連機関と共同で、対外援助における部門間連絡機構を正式に成立させた。2011年2月に部門間連絡機構は部門間協調機構へと格上げされた。
六、対外援助における国際協力
中国は主に二国間援助にウェートを置いているが、同時に力の及ぶ範囲でという前提のもとで、国連など多国間機構の開発援助活動をサポートし、それに参加している。また、開放的な姿勢で多国間組織とその他の国の開発援助分野において積極的な交流を展開し、実務的な協力関係を模索している。
2005年以来、中国はいくつかの国際的な多国間組織や国々と、開発援助領域における交流を展開している。また、国連発展資金調達に関する会議、国連ミレニアム開発目標に関するハイレベル会合、国連開発協力フォーラム、援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム、主要8カ国(G8)と新興途上国5カ国(中国、インド、ブラジル、南アフリカ、メキシコ)を加えたハイリゲンダムサミットの「ハイリゲンダム・プロセス(ハイレベル対話プロセス)」、世界貿易機関(WTO)の「貿易のための援助」グローバル・レビュー会合など多くの国際開発協力に関する会議やフォーラムに参加し、その他の援助国との交流とコミュニケーションを強化し、南南協力を積極的に推進している。
中国は二国間援助を行うと同時に、一部の国際的な多国間組織や国々と、スキル、トレーニング、インフラ面の建設の上で、各自の強みを生かす三者協力や区域協力を十分に展開し、積極的な成果をあげている。1981年に、中国と国連開発計画(UNDP)が共同で、中国での発展途上国間技術協力(TCDC)プロジェクトを実施し、20数年の間に6000人以上に上る発展途上国の人びとに対して技術トレーニングを行った。1996年から、中国は国連食糧農業機関(FAO)に協力して、発展途上国に中国の農業専門家を派遣しており、2009年末までに、アフリカ、カリブ、アジア太平洋地域22ヵ国に累計700人以上の農業専門家と技術員を派遣した。また、中国は世界銀行、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連工業開発機関(UNIDO)など多国間機構とシンガポールとの間で、トレーニング分野で効果的な協力関係を展開している。大メコン川準地域協力の枠組みのもとで、中国はタイおよびアジア開発銀行(ADB)と共同出資し、中国・昆明とタイ・バンコクを結ぶ高速道路のラオス区間の建設を支援し、すでに2008年3月に開通している。また現在、中国、タイ、ラオスおよびアジア開発銀行は共同で中国・昆明とタイ・バンコクを結ぶ高速道路のメコン川を跨ぐ大橋プロジェクトを進めている。
当面、国際開発援助においては全般的に規模が拡大し、南南協力は急速に発展している。また、南北協力への有益かつ効果的に補充するものとなっている。中国は南南協力の枠組みの下で、被援助国の希望を尊重した上で、優位を保ちながら互いに必要な部分をカバーし、関係側との三者および区域協力の効果を十分に発揮させ、共に世界における貧困を減らしていかなければならない。
結びの言葉
現在、世界の開発環境は依然として厳しい状態にある。国際金融危機の影響は完全に消えたとはいえず、気候変動、食糧危機、エネルギー資源の安全問題、伝染性疾病など世界規模の問題が、発展途上国に新たな挑戦をもたらしている。また、国際経済発展の中に生まれるアンバランス現象が、日を追うごとに深刻になっており、南北の貧富の差が広がっている。国際社会は協力関係を強化し、共に発展のための挑戦に対応していかなければならない。
新たな情勢のもとで、中国の対外援助事業は任重くして、道遠しといえる。中国政府は、対外援助の構造を最適化し、その質を高め、被援助国の自主的な発展能力をちくじ増強し、支援の目標性と実効性の向上をはかることに力を注いでいく。中国は国際社会における重要な構成部分として、今まで通り南南協力を推進していく。また、経済発展が続く中で、対外援助の投入を拡大し、世界各国と共に、国連ミレニアム開発目標を実現し、恒久な平和、そして共に繁栄し、調和のとれた世界の建設のために、たゆまぬ努力を続けていく。
付 録
付録1 中国の対外経済技術援助に関する8原則
(1964年1月)
1、中国政府は一貫して平等互恵の原則に基づき対外援助を行う。つまり援助を一方的な贈与ではなく相互的なものとみなす。
2、中国政府は対外援助を提供する際、被援助国の主権を厳格に尊重し、けっしていかなる条件および特権も求めない。
3、中国政府は無利子または低金利貸付の方式により援助を行う。また、必要に応じて返済期限を延長し、被援助国の負担をできるかぎり軽減させる。
4、中国政府の対外援助の目的は、被援助国の中国への依存をもたらすものではなく、被援助国が自力で、経済面で独自の発展を遂げるよう助けるものである。
5、中国政府が被援助国に対して実施するプロジェクトは、低投資で速く収益が上がるものであり、被援助国政府の歳入を増やし、資金を蓄積するためのものである。
6、中国政府は中国国内で生産する最も高品質の設備と物資を国際市場の価格に準じて提供している。また、もしそれらが合意に達した規格と質に合わない場合は返品を受け入れる。
7、中国政府がいかなる技術援助を行う際も、被援助国の人員に十分に技術を掌握させることを保証する。
8、中国政府が被援助国の建設を援助するために派遣する専門家は、被援助国の専門家と同様の物質的待遇を受け、いかなる特殊な要求と特典も享受しない。
付録2 中国政府が国連発展資金調達に関する首脳会議で
発表した5つの措置(2005年9月)
1、中国は中国と外交関係のある39の後発発展途上国(LDC)の一部製品に対し、関税を免除することを決定した。その範囲にはこれらの国からの対中国輸出商品の大多数が含まれる。
2、中国は重債務貧困国(HIPCs)と後発発展途上国に対する援助規模をさらに拡大し、向こう2年以内に、二国間協議を通して、中国と外交関係のある重債務貧困国の2004年末までに期限となる、中国側に返済されてないすべての無利子貸付と低金利政府借款の債務を免除するか、もしくは他の同等の措置をとる。
3、3年以内に、発展途上国のインフラ整備と企業間連携を促進するために、発展途上国に対し、100 億ドルの特恵貸付と特恵バイヤーズクレジットを提供する。
4、3年以内に、発展途上国、とくにアフリカ諸国に対する援助を増やし、その中ではマラリア予防特効薬を含む医薬品の提供、医療施設の設立と整備、医療人材の育成の援助が含まれる。これらの措置は中国・アフリカ協力フォーラムなどのメカニズムおよび二国間協議を通じて実施される。
5、発展途上国の人材育成の加速を図るため、3年以内に、多様な分野の人材を3万人養成する。
付録3 中国・アフリカ協力フォーラム北京サミットで
中国政府が発表した8項目の措置
(2006年11月)
1、中国のアフリカへの支援の規模を拡大するため、2009年には中国の援助規模を2006年の2倍に引き上げる。
2、今後3年間にアフリカ諸国に30億ドルの特恵貸付と20億ドルの特恵バイヤーズクレジットを提供する。
3、中国企業のアフリカへの投資を奨励・サポートするため、中国・アフリカ発展基金を設立し、基金総額を段階的に50億ドルにする。
4、アフリカ諸国の連帯強化と一体化プロセスをサポートするため、アフリカ連合(AU)会議センターの建設を援助する。
5、中国と外交関係のあるアフリカの重債務貧困国と後発発展途上国に対し、2005年末までの中国政府による無利子貸付の債務返済を免除する。
6、アフリカへの市場開放を一層促すため、中国と外交関係のあるアフリカの後発発展途上国の対中国輸出の製品に対するゼロ関税品目を190から440以上に増やす。
7、向こう3年間に、アフリカ諸国に国外経済貿易協力区を3~5ヵ所設立する。
8、今後3年間にアフリカ諸国のために1万5000人の各種人材を育成する。また、アフリカに高い技術レベルを持つ農業技術の専門家を 100 人派遣し、アフリカに特色ある農業技術モデルセンターを10 ヵ所設立する。またアフリカのために30ヵ所の病院をつくり、3 億元の無償援助を提供することで、アフリカのマラリア対策の支援に協力し、アルテミシニンの提供および 30 ヵ所のマラリア対策センターの設立に用いる。また、アフリカに青年ボランティアを300人派遣し、アフリカのために 100ヵ所の農村学校の建設を援助する。2009年までに、アフリカ出身の留学生への政府奨学金支給対象者を毎年2000 人から4000 人に増やす。
付録4 2008年国連ミレニアム開発目標に関する
ハイレベル会合で中国政府が発表した
6項目の対外援助措置(2008年9月)
1、今後5年内に、建設を援助する発展途上国の農業技術モデルセンターの数を倍増し、30までに増やす。対外派遣の農業専門家と技術要員の人数も倍増して1000名に増やし、同時に発展途上国のために延べ3000人の中国での農業トレーニングを提供する。
2、中国は国連食糧農業機構(FAO)に3000万ドルを寄贈して信託基金を設立し、発展途上国の農業生産能力向上のプログラムと活動を援助するために用いる。
3、食糧が欠乏し逼迫している国への輸出と援助を増加する。
4、向こう5年間に、発展途上国に向けて中国への留学奨学金給付対象者を1万人新規追加し、同時にアフリカ諸国のために校長および教師1500人を養成し、アフリカ諸国のために建設を援助する30の病院に適当な人数の医師と医療設備を配備し、同時に関連の被援助国のために医師、看護要員および管理要員1000人を育成する。
5、中国は2008年末に期限が到来して返済されていない後発発展途上国の無利子借款を免除し、関連する後発発展途上国の95%の製品にゼロ関税の待遇を与える。
6、今後5年間に、発展途上国のために100ヵ所の小型水力発電、太陽光エネルギー、メタンガス等の小型クリーンエネルギープロジェクトの建設を援助する。
付録5 中国・アフリカ協力フォーラム第4回閣僚級
会議で中国政府が発表した8項目の新措置
(2009年11月)
1、中国・アフリカ気候変動対策パートナーシップを構築し、不定期のハイレベル協議を実施することを提唱する。衛星による気象観測、新エネルギーの開発と利用、砂漠化対策、都市環境の保護などの分野での協力を強化する。中国は、太陽光エネルギー、メタンガス、小型水力発電所など100件のクリーンエネルギー事業で、アフリカを支援することを決定した。
2、科学技術協力を強化する。「中国・アフリカ科学技術パートナー計画」を始動することを提唱する。合同科学技術研究モデル事業を100件実施し、アフリカから後期博士課程生100人を中国での科学研究のために受け入れ、さらに彼らの帰国後の仕事に援助を提供する。
3、アフリカ諸国への融資を強化し、アフリカ諸国に100億ドルの特恵貸付を提供する。中国の金融機関による10億ドルの対アフリカ中小企業発展特定融資の設立をサポートする。中国と外交関係のあるアフリカの重債務貧困国や後発発展途上国に対し、2009年末までに期限を迎えていながら中国側に返済されていない政府無利子貸付債務の返済を免除する。
4、アフリカ製品への市場開放を拡大する。中国と外交関係のあるアフリカの後発発展途上国の95%の製品に対する関税免除措置を徐々に実施する。まず2010年内に、60%の製品に対し関税免除措置を実施する。
5、農業協力を一層強化する。中国が支援するアフリカ諸国の農業モデルセンターを20ヵ所に増やし、またアフリカの食糧安全確保能力を高めるため、50の農業技術グループをアフリカに派遣し、アフリカ諸国のために農業技術者を2000人育成する。
6、医療衛生協力を深める。中国がアフリカに援助する30ヵ所の病院と30ヵ所のマラリア予防治療センター施設に5億元相当の医療設備や抗マラリア物資を提供し、アフリカのために医療要員を3000人育成する。
7、人的資源の開発や教育面の協力を強化する。アフリカ諸国のために、中国・アフリカ友好学校50校の建設を支援し、校長や教師を1500人育成する。2012年までにアフリカへの中国政府奨学金支給対象者を5500人に増やす。今後3年でアフリカのために計2万人の各種人材を育成する。
8、人と文化の交流を拡大する。「中国・アフリカ共同研究交流計画」を実施し、学者やシンクタンクの交流や協力を促進し、発展経験の交流を行い、双方のよりよい協力政策の策定のために知的サポートを提供することを提唱する。
付録6 2010年国連ミレニアム開発目標に関する
ハイレベル会合で中国政府が発表した
6項目の対外援助措置(2010年9月)
1、発展途上国の民生事業を促進する。これは、中国の対外援助の主な目標である。これまでのところ、中国は発展途上国のために、150ヵ所以上の学校、約100ヵ所の病院、70ヵ所以上の飲料水施設、60ヵ所以上のスポーツ施設の建設を援助した。約70の発展途上国に、計2万人余りの医療要員を派遣し、億単位の患者を治療した。今後5年間に、中国はまた発展途上国のために、学校200ヵ所を建設し、3000人の医療専門家を派遣し、5000人の医療要員を育成する。また100ヵ所の病院に、医療機器、医薬品を提供し、主として婦女・児童の医療衛生、マラリア、結核の予防、エイズやその他の疾患に用いる。200件のクリーンエネルギーと環境プロジェクトの建設を援助し、小島嶼発展途上国の災害対策への援助を強化し、気候変動に対応する能力を高めるよう支援する。今後3年間に、中国は世界エイズ・結核・マラリア対策基金のために1400万ドルを寄贈する。
2、後発発展途上国の債務負担を減免する。2009年末時点で、中国政府は、50の重債務貧困国と後発発展途上国の256億元の債務を免除し、また、これらの国の2010年までに期限となる、未返済の政府無利子貸付債務の返済を免除する。
3、発展途上国との金融協力を深めていく。発展途上国が国際金融危機への対処を助けるために、中国はアフリカ諸国に100億ドルの特恵貸付を提供し、ベトナム、カンボジア、ラオス、インドネシア、および他のASEAN諸国に150億ドルの貸付を提供した。また国際通貨基金(IMF)にさらに500億ドルを提供し、それを優先的に後発発展途上国に用いることを明確に要求した。今後、中国は発展途上国に一定規模の特恵貸付と特恵バイヤーズクレジットを引き続き提供する。
4、発展途上国との経済貿易関係を拡大する。中国は関税の減免などの多様な手段を通じて、発展途上国の各種製品の対中国輸出のために条件を作り出す。中国は徐々に後発発展途上国の95%の製品にゼロ関税の優遇を与えると約束した。2010年7月から、中国は33の後発発展途上国の4700品目以上の対中国輸出製品に対し、ゼロ関税を実施した。その優遇範囲にはこれらの国の大多数の対中国輸出製品が含まれている。今後、対中国輸出製品のゼロ関税の対象となる品目と特恵国を増やし、また、国内の企業が発展途上国への投資を拡大することを奨励する。
5、発展途上国との農業協力を強化する。中国は発展途上国への農業協力プロジェクト建設はすでに200件以上にのぼり、多くの農業専門家を派遣し、地元の農業の発展を有力的に促進した。今後5年間に、中国は再び3000人の農業専門家と農業技術者を派遣すると同時に、中国での農業技術トレーニングのために5000人を受け入れ、農業企画、交雑種水稲、水産養殖、耕地灌漑、農業機械などの面における協力を重点に力を入れる。
6、発展途上国の人的資源の開発を支援する。中国は発展途上国のために、4000回余りのトレーニングコースを開設し、各分野の管理人材、技術人材を計12万人育成し、被援助国のために金より貴重な人的資源を蓄積した。今後5年間に、中国は発展途上国のために、再び各分野の人材を8万人育成すると同時に、発展途上国からの留学生への中国政府奨学金給付対象者、在職者の院生学歴教育対象者を増やし、3000人の校長や教師に中国でのトレーニングの機会を提供する。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 資料