中国は2007年よりレアアース(希土類)の計画的生産を開始し、輸出枠を削減した。これは欧米や日本など西側諸国の強い反発を招き、各国は「中国は世界のレアアース埋蔵量のほとんどを保有している」として、中国にレアアースの輸出規制を取り消すよう求めている。しかし、米国の関係当局が最近発表したある報告書によると、「中国が世界のレアアースを支配している」という非難はまったくの作り話で、実際には、中国のレアアース埋蔵量は世界の3分の1を占めるに過ぎず、欧米にも大量のレアアースが埋蔵していて、彼らはそれを隠しているのである。
各国が中国を非難
このところ、レアアースの輸入大国は自分たちの利益のために盛んに「中国のレアアースは、埋蔵量、生産量、輸出量ともに世界一である」「世界のレアアースはすべて中国にある」「中国は世界のレアアース供給を独占している」といった発言をして、中国をレアアース埋蔵大国に仕立て上げ、引き続き安価で輸出し、輸出枠を拡大するよう求めている。中国が輸出規制を始めると、これまで長いこと「泥のような価格」で中国のレアアースを買い漁ってきた国は、自分の利益空間が圧縮され、いくつかの企みが頓挫してしまうために、さまざまなルートを通じて中国に抗議しているのだ。
共同通信や産経新聞など日本のメディアはこのほど、「第3回日中ハイレベル経済対話が28日北京で開かれ、日本側は中国に対しレアアース輸出規制の緩和を強く求めた」と報じた。これ以前に欧米も同じような発言をしている。今年3月には、米国のマイク・コフマン下院議員が中国は米国を服従させる市場支配力を持っていると発言。政府は中国に抗議し、なおかつレアアースの価格が高騰する前に、中国から今後5年分のレアアースを購入・貯蔵すべきだと主張した。6月にはEUが報告書を発表し、「レアアースのような原材料はEUの経済発展に重大な意義を持つため、中国のレアアース輸出枠激減によって関連産業にかかる圧力は絶えず拡大する」と指摘した。欧米はまた、中国が鋼鉄やその他の製品の生産に用いる各種レアアース材料の輸出を規制していることについて、WTOに訴えている。
埋蔵量と輸出量の真相
中国のレアアース埋蔵量は本当に各国が言うように絶対的優位にあるのだろうか。中国のレアアース輸出規制は国際市場を操作するねらいがあるのだろうか。これについて中国国内の各種データはいずれも「ノー」との答えを出しているが、各国には受け入れられていない。しかし米国の関係当局が先月発表した報告書にも、こうした抗議の声に反駁する内容が記載されている。
米国のエネルギー政策アナリストのMarcHumphries氏は7月23日、「レアアース:世界のサプライチェーン」という報告書を国会に提出した。これにはレアアースの用途や世界のレアアース資源のサプライチェーン、米国のレアアースに関する法律が詳しく分析されており、「中国」という文字も頻繁に出てくる。「中国の役割」と「中国の輸出政策上の挑戦」の2つの章には、中国の09年のレアアースに関するデータが詳細に記載されている。
そして9ページ目の「09年世界のレアアース生産量及び埋蔵量」の表を見ると、中国のレアアース埋蔵量は3600万トンで世界の埋蔵量の36%を占め、生産量は12万トンで世界の生産量の97%を占めていることが分かる。これに対し、米国は埋蔵量が1300万トンで世界の13%、生産量はゼロ、ロシアは埋蔵量が1900万トンで世界の19%、生産量はゼロ、オーストラリアは埋蔵量が540万トンで生産量はゼロ、インドは埋蔵量が310万トンで世界の3%、生産量は2700トンで世界の2%を占めている。
また、カルフォルニア州に位置するマウンテンパス鉱山についても言及している。同鉱山のレアアースはかつて日産量2万トンに達していたが、中国の安価なレアアースの打撃を受けて封鎖、モリブデンの生産もほぼ停止状態にあるという。報告書は、中国が採鉱量を削減し、違法な採掘活動を取り締まり、割当額や輸出税によって輸出を規制する措置をとっていることで、中国のレアアース輸出量は09年の5万トンから10年には3万トンに減少し、世界は深刻なレアアース不足に直面すると指摘。中国の「信用を失う行動」に対応するために、各国は急いで他のレアアースの輸入ルートを開拓しなければならないとしている。