ポルトガルで商売をする徐定陸さんは、青田県は中国で唯一、欧州の経済情勢とともにある地域だと話す。「昨年と一昨年、青田県の不動産価格はとくに高騰しませんでした。欧州の経済情勢が悪かったため、青田県人は故郷での不動産投資を極度に控えていたからです。数年前、欧州の経済が好調だったときは、青田県人はあふれんばかりの金を稼ぎ、青田県の不動産価格は省都の杭州に匹敵するほどでした。中心部の価格は1平米当たり3万元以上したのです。一般的な地域でも1万5000元前後でした」
浙江省東南部に位置する温州市ではこの現象はさらに顕著である。温州市の最大の特色は「外に出て発展する」ことであり、実に175万人が国内各地で、63万人が世界各地で商売を営んでいる。温州人は世界各地に230以上の華僑組織を設立し、15の中国商品市場、5つの工業団地をつくり、国内外に広く販売網を形成している。
毎年春節の前になると、国内外各地に広がる230万以上の温州人が1年間苦労して稼いだ金を故郷に送金する。07年の春節直前の15日間で、海外の温州人が銀行を通じて送金してきた外貨は1億ドルを超えた。温州市人民銀行が毎月発表する全市の金融機関の人民元及び外貨預金残高によると、08年、09年、10年の春節期間は、同市の外貨預金残高が5億~10億ドル増加した。人民元預金残高の増加は500億~1000億元に達したという。温州日報の記者は、同市の「春節送金ラッシュ」は一般的に春節の半月前に発生すると話す。この半月間はどの銀行に行っても「持久戦」を覚悟しなければならない。半日待たされることも常なのだ。
浙江省全体で考えると、「春節送金ラッシュ」の規模はとてつもなく大きい。省外で商売をしている人の数は約600万人。彼らが生み出す商品や付加価値の総和はどれくらいかというと、昨年は2兆7000億元近くにのぼり、同省のGDP総額と同じであった。同省の金融部門の関係者は、「藤のツルがさらに伸び、その実が故郷に落ちている。この巨大な資金をいかに上手く使うか、これが浙江省の当面する課題である」と話す。