四、依然脆弱な金融システム。金融業界はまだ完全に安定しておらず、次の波に耐える力がない。例えば、ヨーロッパのギリシャ、アイルランド、ポルトガル政府はこれまでずっと債務再編を回避している。債務再編の回避は今後のリスクを増大させるだけである。
五、新興市場経済体の経済の過熱。新興市場経済体(特に中国とその他アジア国家)は急速に成長しており、衰退の気配をほとんど見せていない。新興市場国家の経済成長を支える原動力は主に国内の消費とインフラ投資であるが、輸出も重要な要因である。輸出の成長を確保するため、これら新興市場国家は自国通貨の対米ドルレートが上昇しないように操作している。しかし、貿易黒字が拡大し、多くの資金が流入するようになると、新興国家の中央銀行は多くの外貨を買い入れることで自国通貨の上昇を抑えようとする。これは、先進国の中央銀行が推し進める量的緩和政策と本質的には変わらない。最終的に、これらの国々では穀物や大口商品の価格が上昇し、インフレ率も高くなる(世界穀物価格の上昇は現在中東で起きている混乱の原因の一つである)。
以上の要因により、次のような悪循環が発生している。先進国の経済成長の低迷が債務の増大を招き、債務の増大が通貨政策の実施を煽り、通貨政策がインフレや不動産バブルを招き、新たなバブルが世界金融システムを脅かす。